JIDnews 283

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。




JIDデザインセミナー 日本の意匠「温故知新」物語 第十話
これまでのデザイン こらからのデザイン

 

北・東日本エリア長 池田和修

2009年から毎年開催しているJID連続セミナー日本の意匠「温故知新」物語は、日本の意匠の源泉と発想を探りNext Designのヒントを感じるデザインセミナーです。
様々な分野で活躍されている方々のお話しから“ ビジネスパワー” の源を探り、すばらしい日本の伝統文化と匠の技、最先端技術と開発エピソードなど、色々な話題を交え『温故知新』をキーワードに趣向を凝らしたセミナーです。いまだ低迷する日本のモノ作りの現状、大切なものを失いつつある状況です。文化としての日本のデザイン力、モノ作りの大切さを現代のデザインを愛する人達に伝え、オリジナリティのある自分らしいモノ作りを提唱します。日本のデザイン振興と豊な社会を実現する為に、日本のデザイン力・技術力がより一層厚みを増し発展する為のヒントとなり、『かけがえのない自然環境と共存する豊かな暮らしを持続できる社会』それを実現できる事を願います。自然と感性の合作である日本文化 その豊かな暮らし、環境を後世に伝えるべく、このセミナーは、将来を担う若いデザイナー・学生・デザインに関心のある一般の方々まで広くを対象としています。
その第十話となる テーマは「メディア」

*タイトル:日本の意匠「温故知新」物語 第十話 『メディアする話』

昭和、平成の時を経て
マスメディア(一方向)からソーシャルメディア(双方向)へ
そして令和となった新時代
メディアはどう変化していくのだろうか

*開催日時:2019年7月3日(水) 18:00〜20:45
*会  場: リエゾンセンター (東京六本木ミッドタウン)
*参 加 者 :41名
*セミナー構成
     第一部 基調講演  「コミュニケーションをデザインする」 90分
     第二部 デザイントーク 「メディアの今昔」 講師+聞き手 60分
 
1955年から1973年 高度経済成長時代は、神武景気・岩戸景気・いざなぎ景気・と続きました。
そしてその時代、新聞・雑誌に加え、テレビコマーシャルが登場しました。我国では1953年にテレビ放送が開始され、日本で初めてのCMは1953年8月に放送された、精工舎の正午の時報でした。マスメディアという言葉もこのころ聞く様になります。1980年代後半になると、インターネットが普及し、今では、一方的に情報を発信するマスメディアから、インタラクティブな双方向のやり取りのなかから新たなつながりや価値が生み出されるソーシャルメディアが、暮らしの中に浸透してきています。技術革新により、その変化も止まることをしらず、新しく、さらに変わっていくことが想像されます。
昭和・平成・令和、移りゆく時代の中で、これまでのメディアはどうであったか? そして、これからのメディアはどうなっていくのか?を考えるセミナーです。

 

■第1部 講演  /「コミュニケーションをデザインする」 講師:中島信也 氏 

中島信也 氏 談
私は、武蔵美で造形を学び、昭和の終わりから平成を貫いてテレビコマーシャルの演出を手掛けてきました。決して平坦ではなかったこの道のりのなかで僕は、人にものを伝えることの難しさを痛感し、どうすれば相手にものが伝わるのか、ということを模索し、思考錯誤を続けています。「デザイン」が単なる造形物ではなく、人を相手にするコミュニケーションでもある、という観点から見た時、僕が得つつある極意は、デザインという世界に住む皆様になんらかのヒントとなるのでは、と妄想し、今回はお話をさせていただこうと思います。

中島信也 氏 Mr.Shinya Nakajimaプロフィール
CMディレクター・ 株式会社東北新社 取締役副社長
‘59福岡生まれ大阪育ち。‘82武蔵野美術大学造形学部 視覚伝達デザイン学科卒。
‘83「ナショナル換気扇」で演出デビュー。その後東北新社がデジタル映像基地「オムニバスジャパン」を創設、これを機にいちはやくデジタル技術をCMに導入しエンタテインメント性の高いCMを数多く演出。
主な作品に、日清食品カップヌードル「hungry?」(’93カンヌグランプリ)、サントリー「燃焼系アミノ式」(’03 ACCグランプリ)、サントリー「伊右衛門」(’05 ADCグランプリ)、TOTOネオレスト「菌の親子」(’15 ACCシルバー)など。劇場用映画監督作品に『ウルトラマンゼアス』(1996 年)『矢島美容室The movie』(2010年) 2015年から文化放送「なかじましんや土曜の穴」パーソナリティー。

■第2部 デザイントーク /『メディアの今昔』 
ゲスト 中島信也氏   聞き手 池田和修 JID

池田和修 Mr.Kazunobu Ikedaプロフィール
インテリアデザイナー 有限会社アルグレイン 代表取締役
‘58大阪生まれ ’82武蔵野美術大学造形学部 工芸工業デザイン学科インテリアデザイン専攻卒業
ケイ・アイ・ディアソシェイツ勤務 インテリアデザイナー北原 進 氏に師事 
ホテルやオフィスのインテリアデザインを担当 ‘96有限会社アルグレイン設立 
主にホテルにおける、内装、家具、サイン、アートワーク、などのデザインを手がけている 
JID北・東日本エリア長

 

<デザイントーク後記/池田和修>

大学時代の友人である中島さんと、このような場で対面して真面目な話をすることが初めてだったので、セミナーが始まるまでは、なんだか気恥ずかしくもあり緊張していたが、第一部の講演を聞いて、その緊張もほぐれた。
TVコマーシャルができるまで・CMディレクターの役割・制作の苦労話・等々を、滑らかな口調で、代表的なCM作品を紹介しながら、人々の目に直接触れる表現であるCM映像に大切なことはなんであるか?を常に考え、映像に触れた人の心がプラスに動く様な作品作りを心がけていると中島さんは言う。
そして『喜んでもらイズム』送り手と受け手の良い関係・受け手に喜んでもらう・好きになってもらう、まさにインテリアデザインやプロダクトデザインが、使い手に気に入ってもらえるものを、いかにつくるか?が大切なように、他のデザイン領域とまったく同じなのであり、そして「想像心」、受け手がどう感じるか、嫌な気持ちにならないか?を想像する「想像心」が大切であると言う。
表現の最大の目標は、喜んでもらって好きになってもらうこと、「好きになる」「お気に入り」という心の関係で結ばれることが、豊かさの一つであり、おもいやりの精神・想像心を磨いて『喜んでもらイズム』を実践すると言う事が、これからもずっと中島氏の修行の最大の目標であるとのこと。

私たちが、「メディア」と聞いて思い浮かべるものの一つであるTVは、1950年代後半から1970年代前半の高度経済成長期の大衆情報媒体(マスメディア)の代表的なものであり、街灯テレビから一家に一台のテレビへ、そしてカラーテレビの普及、みんなが見るマスメディアと大量消費時代における広告とマスメディアの親密の関係が生まれ、現在にいたっている。高度経済成長時代は、広告がなくても、物がたくさん売れた時代だったかもしれないが、されど広告主は、マスメディア 特にTVコマーシャルを重要と考えていた。

マスメディアからソーシャルメディアへ、そして今後それはどのようになっていくのだろうか? の問いに関して、
情報交流・人々が繋がりを求める為のソーシャルメディアが普及する現状において、今後マスメディアは無くなるのでは?と言われるが、ネットメディアが普及しても、やはり企業価値を示すメディアは TVメディアであり、パブリックメディアとしてのTVは残ると考えられる。
伝わっていく為のメディア、口コミ、好きなものを見る集まりなど、ネット上のコミュニティに広告主も注目しているのは事実である。しかしながら、マスメディアとことなり、不特定多数の誰でもが配信できる
ネットワークメディアに、危険思想や嘘の情報が流れ得ることも事実であり、注意すべき点であろう。

今後5G 超高速通信網が整備されると、たとえばリアルタイムに人の心を感知して、その情報が企業に伝わり、瞬間的にその要望がサービスされることなど、でき得ることだと思う。人と人の間にあるのがメディアであり、人から人へ瞬間的 感覚的に直接伝達されるなら、メディアはいらなくなるのではないだろうか?いつかはコンピューターに支配される時代が来るだろうと考える人が多かった2000年、その頃を境に、人はどんどん阿呆になっているのかもしれない。
(電話番号や漢字を覚えられなくなったのは歳のせい、だけじゃないかもしれない)

コンピュターグラフィックのない時代、昔のCMは、非常に勉強になる。広告でありながら広告以上の作品が多く、人の生活の中の一部を切り取った映像の様な広告など、映画芸術のエネルギーが漲る作品が多く、まさに温故知新である。 

メディアすなわち媒体の『媒』の字の意味は、『なかだち』『関係を取り持つ』である。
人と人の関係を取り持つ メディアは、これからも、人の為に、豊さを提供する「なかだち」でありつづけてほしい。でトークを終えた。