JIDnews 285

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。


第24話・デザイン職人/四方山話
剣持 勇の「ジャパニーズ・モダン」ご報告

北・東日本エリア 阪井良種


 デザイン職人/四方山話、剣持 勇の「ジャパニーズ・モダン」を11月29日(金)18:00~20:00天童木工東京ショールームに於いて開催いたしました。
今回は、参加希望者が開催直前まで途切れず申し込みをお断りする嬉しい事態、当日は80名と予定を大きく上回りました。
委員会では、今回始めて故人を取り上げ不安もあるなか胸を撫で下ろしました。
開催に先立ち、館内見学ツアー(設計:坂倉準三建築研究所・長 大作氏担当)を先着20名で行いました。
 「四方山話」は、㈱剣持デザイン研究所代表松本哲夫氏と元天童木工㈱商品開発部長菅澤光政氏のお2人です。
先ず松本氏から剣持氏の生い立ち、厳格な職業軍人の父の教育や家族構成。
学生生活は東京高等工芸学校木工芸科(現千葉大)を卒業。設立間もない仙台商工省工藝指導所に入所(1932)。戦時中は軍事下で軍に所属し木製飛行機の製作。
 戦後、ブルーノ・タウト氏との出会いや渡米での刺激的な体験。チャールズ・イームズやジョージ・ネルソンとの親密な交際の始まり、日本独自のスタイルを模索して「ジャパニーズ・モダン」に繋がる経緯。
 デザイン研究所設立、公共施設などの著名建築家とのコラボレーション、民間の大型施設などのインテリア・家具デザイン、各種プロダクトデザインなど多くの作品を生み出し、戦中の成形合板との繋がりによって、その後長く天童木工との関係が続いた。
 話の終わりに、最後の仕事となった京王プラザホテルのオープン間近にして自ら命を絶たれた、なかなか人に話せなかった氏の心の病の状況や対応を話されました。この時は会場が静まり参加者各自が故人に思いをはせた様子でした。
 続いて菅澤氏からは、天童木工の生い立ちや天童の町の発展を目指し木工組合をつくり、軍の木製の運搬用の箱を製作し実績を積み重ねて軍の評価を受け、木工生産を軌道に乗せた事が天童木工の始まりと話されました。
 戦後工芸指導所の乾氏を招き、指導所のノウハウなどを生かし独自の木材成形技術を発展させ「成形合板の天童木工」として成長する過程などを話された。
また、剣持氏の思い出として試作チェックでの的確で素早い指示、仕事を離れた時の氏の陽気で気さくな振る舞い、周りの人をいつもユーモアで楽しませた様子などのエピソードを話され、その後参加者からの質疑応答で会を終了した。

 懇親会場を2階に移動、46名の参加者で大いに盛り上がり、登壇者の松本氏は数日前に90歳の誕生日を迎えられたとの事で心ばかりのケーキでお祝い。
定刻を少し延長しての散会となるが、皆さん暫く分かれがたい時間が流れる中のおひらきとなりました。


左 松本哲夫氏  右 菅澤光政氏


    会場風景            懇親会 松本氏バースデー 


劍持 勇 氏


ラタンチェアー 1960年 製作/山川ラタン
1964年ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクション選定



椅子 1965年 製作/天童木工


座卓 1967年 製作/天童木工


ヤクルト容器 1969年 ヤクルト本社


京王プラザホテル(ロビー) 1971年 所在/東京都新宿区西新宿
建築:日本設計 インテリア総括顧問:剣持 勇