JIDnews 266

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

九州発『北欧展 2014 in TOKYO 』
東日本大震災チャリティーイベントへ 協力のご報告

北・東日本エリア担当理事/チーム北欧リーダー 井出 昭子

JID後援の九州発『北欧展2014』東日本大震災チャリティーイベントは、
11月22日〜24日は福岡会場(マイノリティレッブ平尾)、
12月3日〜12月7日は東京会場(CASE gallery)に於いて開催されました。
東京会場イベントは当エリアのJIDチーム北欧メンバーがボランティアでトークイベント、デザインセミナーやワークショップ等へ協力をいたしました。

主催:九州産業大学工学部  住居・インテリア設計学科/建築学科
共催:マイノリティレッブ、有限会社ケース
後援:デンマーク大使館、スウェーデン大使館、フィンランド大使館、
   ノルウェー王国大使館、福岡デンマーク協会、九州フィンランド協会、
   福岡日本・フィンランド協会、福岡・ノルウェー友好協会、
   北欧建築・デザイン協会、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会(JID)
   福岡県建築士会、九州旅客鉄道株式会社、福岡市

■東京会場テーマタイトル
 『北欧のシンプルライフを通じて考える自分を幸せにする大切なモノとは?』

モノも情報も膨大に溢れる反面で、断捨離の文字が飛び交う昨今、あなたの暮らしに本当に必要なモノとは何か?立ち止まってコレカラを考える5日間となりました。
昨年、社会現象を巻き起こしたフィンランド映画「365日のシンプルライフ」の上映とアップサイクルについて考える、持ち寄ったモノを交換するイベント「クリーニングデイ」が今年のテーマベースになっていました。
ご参加した皆様が「本当に大切なモノ」暮らしや自然環境を考えるきっかけになれたなら大変嬉しく思います。

■ JID協力イベント(東京会場:CASE gallery)
*12 月3日「スウェーデンのホスピタルアートとケアデザイン」
*12月4日「東京の森・北欧の森・世界の森から」(企画協力:(株)東京・森と市庭)
       交流会「ワンナイト・ノルデックバー・フロム トウキョウフォーレスト」

*12月7日「ミニチュア・北欧の名作椅子をつくろう」(2回目は2015年2月に予定)


ナシエさんダーナラホース


CASE gallery 湯川さんと常設展示の様子

JID協力イベント総参加者は64名で、参加費の1部が義援金となりました。
また北欧にまつわる20人のクリエーター、デザイナーから寄せられた「誰かに受け継ぎたい」北欧からもらったモノがチャリティー出品された常設展では、それぞれのストーリー、写真展示と共に赤いプレゼント箱に入っていました。 来場者が受け継ぎたいアイテム箱を楽しみながら開ける仕掛けです。
それはチャリティーオークションの後、落札された方へ贈られました。それらの落札金も義援金となり、 主催者の九州産業大学で総集計された後、日本赤十字社を通じて被災地へお届けします。皆様ご協力ありがとうございました。
(JIDチーム北欧メンバー:池田和修、井出昭子、石川尚、尾崎めぐみ、川上玲子、
 菅野民子、小林秀徳、中野公力、原山英弥、山本信比古)

○イベント1
JIDトークイベント:『スウェーデンのホスピタルアートとケアデザイン』
12月3日(水)18:00〜19:30
講師:赤羽美和、コーディネーター:清水忠男

著 : こころとからだのケアデザインプロジェクト リーダー小林秀徳





赤羽さん、清水さんとトーク会場様子

「人は誰でも文化的に最低限保証された生活を送る権利がある」という考えから、スウェーデンでは公共建築の新築・改築に際して予算の1%(病院の場合は2%)をアートに割くことが法律で決められています。
このルールに基づいて行われるホスピタルアート事情について、2013年からストックホルム市内病院<St Göran Hospital>のホスピタルアート製作を手がけている赤羽美和さんをむかえて経過についてお聞きしました。
講師として来て頂いた赤羽美和さんと初めてお会いしたのが9月末でした。
今回のトークイベントのテーマとなるスウェーデンの病院のホスピタルアートについて、コンペから始まり、決まってから病院スタッフとのワークショップ、そして作品を作るまでの流れを赤羽さんからお聞きし、その話の内容の濃さや赤羽さんの静かなるパワフルさを感じました。

トークイベント当日は、以前にお聞きした内容に加え、その後に進行したスウェーデンの現場(St Göran Hospital)でのアート設置立ち会いの状況や、現地でのやりとり等の生き生きとした話しをして頂きました。2部のディスカッションには、コーディネーターとしてJID会員の清水忠男さんに参加頂き、清水さんの巧みな司会で、赤羽さんからさらにホスピタルアートについて北欧と日本とのアートに対する考え方やその手法について引き出して頂きました。
またJID「からだとこころのケアデザインプロジェクト」が共同開発をした高齢者用椅子が会場に置かれ、お二人に座って頂きながらのトークとなりました。(株)アイデック社のご協力にて赤羽さんデザインの生地がカバーリングされた椅子です。
イベントに参加した方からは、若い日本のデザイナーが海外で堂々とプロジェクトを進めているなんて素晴らしいとのコメントも頂き、有意義なデザイントークとなりました。
http://www.jid.or.jp/event/event.php?eid=61

○イベント2
Next designのヒントを感じ取る JIDデザインセミナー『東京の森・北欧の森・世界の森から』
12月4日(木)17:00〜18:30
講師:竹本吉輝、大島正幸、ファシリテーター:石川 尚

著 : 副理事長 石川 尚


左より大島さん作品、大島さん、竹本さん、石川さん


竹本さんと会場様子

昨年に続き、12月3日開催の東日本大震災チャリティー「北欧展2014 in TOKYO」。2日目のデザインセミナーは、お二人の講師とファシリテーターとして石川が参加しました。

テーマは、
「東京の森・北欧の森・世界の森」

まず、(株)東京・森と市庭(いちば)代表取締役:竹本吉輝さんに、「北欧の森、東京の森、木を通じた暮らし」についてお話し頂きました。
北欧では低い人口密度と森林資源を活かした暮らし、日本では高い人口密度と戦後急速な近代化の暮らし、この二つの暮らしに大きく影響を及ぼしている森と木。特に北欧では、リーマンショック以降は木材需要が増し、資源としての大きな存在となっています。それに比べ日本では、北欧と同様世界の森林大国でありながら木材輸入超過と放置林の拡大が進んでいます。双方とも国策としての結果がこの現状を生んでいます。つまり、森林政策では日本の現状は壊滅状態。

光、風景、未来のデザイン
では、どうするか?
竹本さんは、3つのデザインが必要だとおっしゃっています。
森の中の林のレイアウトを試行する「光のデザイン」、
そのことにより心象風景としての森をめざす「風景のデザイン」、
森の整備=子供が育つ環境をつくる「未来のデザイン」。

森と都市が一体としてある東京でその実践に励んでいらっしゃる竹本さんの言葉には実績に基づく自信と可能性を感じます。

無給の2年間から学ぶ
次に木工房ようび代表取締役:大島正幸さんは、「森とつながる家具。森に応えるデザインと仕事」について。
大島さんは、岐阜の家具製作工房で修行。2年間無給で朝の5時から21時迄仕事をし、木組みの技と家具製作の腕を磨いた後、オークビレッジを経て森林の村、岡山県西粟倉に移住。1年363日、ずっと日本の針葉樹を家具に活かす研究をし続け、針葉樹の木組みで実用新案をとる等画期的な家具製作を続けています。

温かいヒノキウィンザー
とくに「ヒノキウィンザー」と命名された桧の椅子は、神々しいばかりの美しさと構造的に実証された安定感を醸し出しています。
トークセッションで気になる木組みの秘密をお聞きしましたが、核心部分はなかなか話していただけず、益々針葉樹利用の可能性に興味を持ちましたね。

「日本のsoft wood(針葉樹)は、軽く、空気が入っているから温かい家具となる。使いこんで、やがて風景になるモノづくりを目指しています」と語る大島さんの今後の家具作りに大いに期待します。

自分たちの暮らしの中に全てがある
私も交えてのトークセッションでは、「森と暮らしとデザイン」について進行。
針葉樹利用の家具として(株)天童木工に協力展示頂いた国産杉の椅子なども交え、マーケティングやデザインについて話が続きます。

中でも『自分たちの暮らしの中に全てがある、つまり森という環境とそこから生み出される資源を活かすデザインは、私たちに豊かな暮らしをもたらす。』が、印象的なキーワードでしたね。

国土の約67%という森林率の日本は、世界第二位の森林大国。この森と暮らしとデザインにもっと目を向け動けば今後の姿が見えてくる・・・私たちのNext Designのヒントになるお二人の活動に来場者も熱い眼差しをおくるデザインセミナーでした。
http://www.jid.or.jp/event/event.php?eid=62

○イベント3
交流会『one night Nordic bar from Tokyo Forest』
12月4日(水)19:00〜21:00
ゲスト店長:井出昭子、ギター演奏:山本信比古

著 : 井出昭子




歓談の様子


NOBUさんライブ








東京の森からの食材

会期中のひと晩だけオープンの今年の北欧バーは、当日のデザインセミナー「東京の森・北欧の森・世界の森から」の交流会も兼ねて総勢26名のご参加者を頂きました。
東京の中山間地域における暮らしは、その急峻な地形を生かした知恵と共に育まれてきました。
急峻な坂は、水はけが良い土壌に適した農作物を、森では鹿肉を、きれいな沢水はわさびを、森の恩恵としていただいてきた…これらの食材を通じて、「森での暮らし」を知り、これからのライフスタイルに取り入れるきっかけづくりとなればとの思いから、一般では販売していない、100年原種の治助いも(じゃがいも)、しいたけ、鹿肉。そして奥多摩のおいしい湧き水から生まれた地酒「多滿自慢」など、いずれも東京の森の生産者様のご好意によりご提供をいただきました。

北欧諸国とも共通した「森での暮らし」シンプルライフです。北欧ではじゃがいもは頻繁に食卓にあがります、またフィンランドで食すトナカイの肉も有名です。治助いもはマシュポテトに、鹿肉は北欧風家庭料理にアレンジ。リンゴンベリージャムも奥多摩わさびも添えての美味しいコラボとなりました。

会場にて地元レシピもご紹介しましたが、是非皆様、奥多摩へ行かれて森を楽しみ、森からのおいしい恵みを召し上がってみてはいかがでしょう!!
会場内は、アーコーステックギターライブの生演奏と共に、セミナー講師達や参加者との交流など楽しく盛り上がったワンナイトノルデックバーの一夜となりました。
ご協力を頂きました皆様ありがとうございました。
日本酒提供:石川酒造  http://www.tamajiman.co.jo/
食材提供:小河内振興協議会  
協力:(株)東京・森と市庭  http://mori2ichiba.toyko.jp/


 

 

 

○イベント4
Workshop 『ミニチュア・北欧の名作椅子をつくろう』ハンス・ウェグナーのElbow Chair
12月7日(日)11:00~19:00
講師:石川 尚

著 : 井出昭子
実物と全く同じ素材・作り・仕上を正確に1/6で創るミニチュア椅子。原寸図面作成から治具・部品製作の下準備に3ヶ月近く、石川先生、今年もミニチェア・ワークショップお世話になります。
さて当日、本格的電動工具を搬入しての作業開始です。大人が、普通の主婦達、親子が午前から夕方迄の6時間、「ミニチュア椅子作り」に専念。
昨年と同様に石川先生は、やさしく丁寧なご指導です。親子で参加の息子(中学生)さんは、最初は苦手だった工作がいつのまにか「石川先生教えて下さい」とお母様が驚くほど熱心な取り組みへ。そして嬉しいことに今年も参加の2名は、とても真剣な目つきではありませんか。
来年2月にWorkShopパート2を開催予定でまだまだ続きます。次号で完成品をご披露します。
お楽しみに!!
http://www.jid.or.jp/event/event.php?eid=63