JIDnews 286

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

interior TREND

「Paris Déco Off」&「メゾン・エ・オブジェ」2020
     ―パリ視察報告―

西日本エリア長 安藤眞代


 1月のヨーロッパは毎年雪が降り、極寒のイメージがあるのであまり好きではありませんでした。なので4月のミラノサローネや9月のロンドンデザインウィークと気候の良い時期のインテリア展示会に焦点を当てた視察をここ何年は行っていました。
 今年はテキスタイルデザインに焦点を当てたトレンドセミナーを予定しているので、何年か振りに真冬のヨーロッパ・・・パリへ。

 今年は天候に恵まれ青空が見える、寒さが緩んだパリでした。しかし年末から続く地下鉄の大規模 なストライキで、世界中から集まった多くのデザイナーやエージェントの皆さんも市内の移動には大変苦労しま した。その為か、携帯電話の登録で乗り捨て出来る、電動キックボードが大人気。

       人気のキックボード

メゾン・エ・オブジェの本会場は、シャルル・ド・ゴール空港近くの大きな会場(ノール・ヴィルパント見本市会場)で開催されていますが、パリ市内中心で 行われるファブリック中心の「Paris Déco Off」パリ・デコオフは、11年前に本会場を出て、現在はセーヌ川を挟んだ、右岸(メール通り)周辺と左岸(サンジェルマンデプレ教会)にほとんどのエディターが集結しています。

 市内会場がミラノサローネほど点々としていないので、とても会場が回りやすいのも特徴です。街の通りにはエディターの個性的な生地を使っての、巨大ランプが通りに吊るしてあり、華やかさを倍増させます。また、シャトルバスストップ場や、通りのあちこちに巨大な椅子や、カプセルの中のベットルーム(宇宙での、生活空間と作業空間提案)ゴンドラや、スキー板に出展メーカーのトレンドの生地でのインスタレーションもされています。

街の通りの巨大な椅子、カプセルのベッドルーム、ゴンドラの展示

 今年はエコフレンドリーな天然繊維を使った新作生地が多く、ここで発表された春夏の新作コレクションの日本国内での発売は、通常5月頃になります。

 130社以上もの世界のトップクラスのブランドのショールームやポップアップショップで構成されるパリ・デコオフのイベントは、本当に華やかで、堂々たる世界のファブリックの最新情報発信地で、内容も安定性を感じさせるものでした。

パリ・デコオフのイベント

 郊外のノール・ヴィルパント見本市会場での「メゾン・エ・オブジェ」は、世界最高峰のインテリアとデザインのトレードショーとして世界中の業界関係者に親しまれ、発表されるトレンド情報が世界を駆け巡ります。インテリア業界のパリコレとも言われ、今ではインテリア業界関係者はもちろんのこと、ファッション関係者も見逃せない見本市となっています。ここには3日間通いましたが、それでも全部は見切れませんでした〜会場が広すぎます。

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ノール・ヴィルパント見本市会場での「メゾン・エ・オブジェ」

 合間の日曜日に以前から行きたくて行けなかったパリの郊外、ポワシーにあるモダニズムの巨匠 ル・コルビュジェの傑作「サヴォア邸」を見学。 青空と白い建物のコントラストが大変美しく、その立ち姿の美しさに心ワクワクになりました。
 電車は一部が運休中でかなり遠い駅までを歩きましたが、のんびりしたポワシーの日曜日の街歩きもお天気なので、なかなか楽しめました。

パリ郊外ポワシー、ル・コルビュジェ「サヴォア邸」

 今回は教えている学校授業の兼ね合いで、本当に弾丸日程視察でしたが、天候に恵まれ、かなり歩きやすかったこともあり、トレンドをしっかりと掴んで来る事が出来ました。やはり実際の目で見て感じて読み取ることで、その本質まで見えてきます。

 年間に海外で行われるインテリアの展示会は山ほどありますが今の自分の立ち位置、仕事、その必要性に応じての展示会を生で見る価値はとても大きいと改めて感じました。今回も25年も続いているメゾン・エ・オブジェ見本市も、今の自分にあった様々な角度から見ることで、また新しい感覚を呼び起こされる素晴らしいパリ視察となりました。

 この記事を執筆している4月上旬、世界は見えないウィルスによって大変な時期に入っています。パリへの展示会視察に行けたのが、今では奇跡のような感じに思えます。一刻も早くこの状況の終息を心から願い、筆を置きたいと思います。