JIDnews 274

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

日本の意匠『温故知新』物語 第八話 
「ヒトの道のそな具え『道具のはなし』」

北・東日本エリア
JIDデザインセミナー日本の意匠「温故知新」物語
プロジェクトリーダー 中野 公力










 11月9日(水)、江戸東京博物館 1階会議室において「日本の意匠『温故知新』物語 第八話」が開催されました。
 今回のテーマは、私たちの日常で使われている「道具」。古くからある生活道具ばかりでなく、コンピュータや携帯電話、移動の道具であるクルマや飛行機など、人類が発明したあらゆる「道具」を対象としたお話しです。
 第1部の基調講演には、(株)GKデザイン機構 取締役相談役の山田晃三氏((公社)日本インダストリアルデザイナー協会理事)を講師として迎え、「道具のはなし―― 一本の骨から、宇宙船まで」と題してお話しいただきました。かつて前足が手になり、骨(道具)を使った瞬間が、ヒトの誕生である。故・榮久庵憲司氏の「道具とは道に具わりたるもの」「ものには心がある」という思想を随所に織り交ぜ、GKでデザインされた製品をはじめ様々な事例を、映画『2001年宇宙の旅』になぞらえてお話いただく様に来場者も引き込まれます。最後に二足歩行で背骨がまっすぐになったことが人類たる所以とし、「今一度、ヒトとして背筋を延ばして堂々と生きたい」という言葉で締めくくりました。
 第2部では、ゲストに山田氏、パネリストに道具学会会長の面矢慎介氏(滋賀県立大学人間文化学部教授)を迎え、三野博昭氏(JID会員)の進行のもとデザイントークを行ないました。山田氏と面矢氏はGKインダストリアルデザイン研究所の同期。山田氏はデザイナーとして「道具論」、面矢氏は研究者として「道具学」という分野の違う視点から、「道具」について白熱した議論が交わされました。
 人類はどんな思いで道具を進化させたのか。過去・現在・未来をあらためて考える機会となりました。「道具とは何かを考えることは、ヒトとは何かを考えるに等しい」という山田氏の言葉を理解できたように思えます。