JIDnews 280

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

interior TREND



変貌するまち、ワルシャワ

 

西日本エリア 桑山 真弓


 フィンランドデザインツアーを終え8月4日~7日有志4名でワルシャワを訪れました。
「Heart of Europe」と言われるポーランド。ポーランドはヨーロッパの中央に位置することから、地政学的にも文化的にも東西ヨーロッパの架け橋となっている。

ポーランド最大の都市であるワルシャワの旧市街は13世紀に建設され、18世紀にかけて「北のパリ」と呼ばれるほどの栄華を誇った。しかし、次々に力で押さえつけてくる近隣国、そして第二次世界大戦でドイツ軍によって歴史あるポーランドにとって重要な建造物に狙いを定め、ワルシャワの街を徹底的に破壊された。なんと建物の90%が破壊された。
その後市民の努力で、ヒビ一つに至るまで、忠実に再現され、復元された「ワルシャワ歴史地区」は1980年に異例の世界遺産に登録されている。
戦時中に、建築家の学生らによって描き残されたスケッチの数々や設計図をもとに、住民たちの手によって、バラバラに散乱したレンガや破片を集めて、できる限り元通りの場所で元通りの用途に使って再建したという。

街並みや建造物は破壊され、歴史や文化といった「形」としては守ることは出来なかったが彼らのアイデンティティが崩壊することはなく、「記憶」「気概」は、全て現代に蘇らせた。

ため息が出るほど豪華絢爛・芸術・美術品に満ち溢れた王宮。
街を歩けば、至る所に慰霊碑。銃弾の跡はそのまま大切に残されている。
かつて危険とされていた貧困の「プラガ」地区は、アーティストたちが集まり、アートの発信地区となっている。「パリのモンマルトルのような地区になるのでは」とヨーロッパから注目を浴びている。
そして、ワルシャワには多くの投資がなされ世界的建築家による建造物が次々に誕生している。

ワルシャワには、形だけではない人々の心の強さがある。どんなに形が変貌しようと、決して変わらない。だからこそ芸術にあふれ、音楽にあふれている。
生活の中で、決して忘れてはいけないことを気付かせて貰った。

 



ワルシャワ旧市街地


スターリンの贈り物とされるワルシャワ文化科学宮殿と
立ち並ぶ高層マンション群


ドイツ軍と最後まで戦った女性兵士、看護師たちの
慰霊のモニュメント(旧市街地)


ワルシャワ文化科学宮殿の展望台(30階)から見える高層ビル群


ポーランドのベルサイユとも言われる、ヨーロッパでもっとも
美しい宮殿のひとつヴィラヌフ宮殿内部


ポーランドのベルサイユとも言われる、ヨーロッパでもっとも
美しい宮殿のひとつヴィラヌフ宮殿内部 (浴室のための部屋)


ポーランドのベルサイユとも言われる、ヨーロッパでもっとも
美しい宮殿のひとつヴィラヌフ宮殿内部 (王のための部屋)