JIDnews 276

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

四国・デザインのルーツを探る1泊研修

西日本エリア 桑山真弓

西日本エリアの四国香川県には多くの作家のコダワリを残した場があります。
6月17,18日に会員と一般応募の参加者17名で「四国・デザインのルーツを探る1泊研修」を行ないました。

○イサム・ノグチ庭園美術館
 1956年に庵治石に出会いアトリエと住居を構え、以降多くの彫刻作品を生み出し、自ら選んで移築した展示蔵や住居イサム家と共に彫刻作品の配置も当時のまま、イサム・ノグチの拘りを見る事が出来ました。



イサム・ノグチ現代美術庭園にて集合写真

○ジョージナカシマ記念館
自然と木を愛し「木を知る」「木のこころを詠む詠む」「木と対話する」「木から始める」を生涯追い求めた家具作家ジョージナカシマのテーブルやイスを一堂に集めた記念館。
個性的な「木」の生いたちやカタチを見てその都度、脚をデザインしテーブルを完成させる。その精神性を見るためには此処へ足を運ぶしかない。


○丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
80歳を過ぎてから描かれた100号を越える大作は赤やピンクの色が踊る、或いは青や緑が・・・こんな若々しい、楽しい画面が80歳を過ぎた人の絵?
世界を旅行中に集めたコレクションや毎日100本のヘビースモーカーが煙とさらば・・・淋しさ紛れに手近かにある紙を巻き、細い針金を巻いた昆虫達「対話彫刻」は作家の個性が滲み出た作品。


「対話彫刻」画家のおもちゃ箱より

○高松丸亀町商店街
高松丸亀町商店街復興組合の方に街づくり事業についてお話を伺いました。
丸亀町商店街は、香川のミラノと言われ、ガレリアのようなドームアーケードがあり、景観はさながらヨーロッパを思わせるほど美しい。
商店街の皆様と街の皆様が一丸となって、復興に向けてのアイデアと愛と芸術への理解を感じるお話でした。


丸亀町商店街レクチャー風景

○政治と芸術の関係性と金子正則元知事の存在
香川県には、どうしてたくさんのアートやデザインが街と共存しているのか。
この2日間、香川県の代表的なアート、デザイン、建築のスポットの見学を通じて解った事は、「デザイン知事」と呼ばれた金子正則元知事の存在でした。
日本の近代庁舎建築のシンボル的存在でもある丹下健三氏の香川県庁舎や県立体育館、大江宏氏の県文化会館などの建築群や、高松近郊に「芸術村」を創る構想で、流政之氏を支援し、イサム・ノグチ氏を牟礼に招致、猪熊弦一郎やジョージ・マカシマとも交流し、アートやデザインのために支援を惜しまなかった。
金子正則元知事の言葉「政治も芸術も、究極の目的は同じ、いずれも人の心を豊かにするためにささげられるべきものだ。つまり、政治と文化は根本的に同じもので、文化的な裏付けのない政治や経済は本物ではない」
香川県の方々の心に受け継がれるアートとデザインへの理解は、この金子正則元知事の存在は大きい。


○会員大野晃貴彦氏の室内楽への訪問とバーベキュー交流会
さぬき市にお住まいの大野さんの自宅/事務所の室内楽へ訪問しました。
ジョージ・ナカシマ記念館訪問の後、予定外の平賀源内記念館に立ち寄り室内楽に着いたのは夕暮れ、瀬戸内海を望む素晴らしいロケーションのご自宅庭にはご家族とスタッフにより四国の食材が準備されていて、とても贅沢なバーベキューが始まり、参加された皆様で和やかな交流会をさせていただきました。
大野さんの細やかなおもてなしとさりげない演出の素晴らしさに感動し、デザイナーたるものの本質を見せていただきました。
著書のタイトル「室礼(しつらい)」という言葉の通り、風と礼節を感じながら、また都会では味わうことの出来ない空気感に浸った夜でした。


大野先生自宅庭にて


大野先生宅でのバーベキュー