JID AWARD 2020 入賞作品

Japan Interior Designers' Association - awards

「JID AWARD」は、2020年3月〜6月の間、公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした156点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づいて第1次、第2次の審査を行い、現地審査や現物審査を行う第3次審査を経てゲスト審査員の参加を得た最終審査で大賞1点、インテリアスペース部門賞3点・入選8点、インテリアプロダクト部門賞3点、NEXTAGE部門賞12点の作品を選出した。

全体講評

選考委員長 米谷ひろし
(TONERICO: INC. 代表、多摩美術大学教授)

デザインに多くのことを求めない、つまりデザインにできることを考えること。コロナ禍で、これまでの常識も変わりつつある中で、デザインにできることも変わっていくと思う。その最中で行われた「JID AWARD」はそういったことを反映した作品が残ったように思う。デザインに多くのことを求めないというのは、今回の大賞作品が最も体現していたように思う。それはこれまでにない価値観を示しながらも、多くのことを望みすぎていない穏やかさや、軽やかに用途に置き換えている。一見するとあたかも機能的な設計にみえるが、無機質なようで、空間の繋がりや、むき出しの構造材、光の扱いなど、空間における自然体といえるのではないかと思う。そういった空気が、今日的な変化に呼応して、共感を呼んだように思う。

JID理事長丹羽浩之
(ヴォイド代表)

「JID AWARD」の大きな特徴としてインテリアスペース部門は2次審査へ進んだ作品は審査員が「現地」を直接訪れ、その空間を体感・確認するという、他のAWARDにはない特別な審査方法を採用しており、インテリアプロダクト部門では「現物」作品を送付いただき、審査をするという方法を採用しています。応募された作品の多くはコロナ禍の前から計画や着工などされていたものも多く、それらを特別意識するものではないが、総じて完成度の高い作品が多く集まった。インテリアプロダクト作品やインテリアスペース作品の双方を通じ、「人と人の繋がり」「人と社会の繋がリ」をデザインするという行為、そして、それらが形になって現れる、予期する以上の「新たな空間・感覚」は、インテリアデザインの重要性と、ワクワクする気持ちを再確認することができ、有意義なAWARDとなったと感じた。

大賞 Grand Prix

清光社 埼玉支店

有井 淳生 入江 可子(アリイイリエアーキテクツ)
(Photo:中村 絵)

[審査講評]

国道と住宅街、見慣れた郊外の敷地に建てられた倉庫&事務所の建築、初めて見た印象は鉄骨造の素直なデザインと思えた。しかし内部に入るとこの建築が木造である事に驚かされる。中央に整然と並ぶ柱、そして柱上部に配置された方杖は空間をリズミカルに分節していくと同時に生まれる菱形の空間がこのデザインの全てを決定しているとみえる。1Fがエントランス&倉庫、2Fがオフィスというシンプルなプランや空気ダマリの空調への転換などの機能的な解決、そして素材の選定、さらに計算されたディティールなど一つも破錠が無い。しかし「かならず現れるもの同士のチューニングを丁寧に行う」と作者が語る様に一つ一つ丁寧に積み重ねられ吟味された各要素の関係が不思議な魅力を生み出している。新たな「スタンダードな空間」の誕生といえる。

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

日本料理 天野 amano

武田 幸司 / Ginga architects

[審査講評]

カウンター席と個室2室のこじんまりとした空間はデザイン密度の濃い魅力的な日本料理の店となっている。オーナーの感性とデザイナーの手腕が創り上げた上質で居心地の良い空間である。オーナーの意向でデンマークのウエグナーたちのデザインの古い椅子を磨き上げて座を張り替えた椅子や神代杉が年月と共に美しく変貌した材を飾り棚に使用、その後ろの壁には古い陶器の欠片が見事にアートとして蘇っている。こういう空間の中で出される日本料理は器と共にアートとなり訪れる人たちを癒してくれるに違いない。(川上玲子)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

もうひとつの森 MARUHON FUKUOKA

フィールドフォー・デザインオフィス
香取建築デザイン事務所 + マルホン

[審査講評]

無垢の木に囲まれた楕円状の空間。2階建、建築面積43.7㎡のマルホンの福岡ショールーム。等間隔に巡らした棚と側板、屋根を支える梁を建築構造にしています。構造体がディスプレイ棚、ストッカーになり、1階の床を720mm下げたデモスペースが3階建てのように見える高さを表現しています。また、回りの1階の床がデモンストレーションカウンターとして図面を広げたリ、素材を組み合わせたり、素材を引き出して色や質感を体験できる等、インテリアから生まれたオフィスです。
(飯田一博)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

出窓の塔居

藤 貴彰 + 藤 悠子

[審査講評]

都心の狭小敷地に建つこの塔状住宅の最大の特徴は外壁全周ぐるりと配置された出窓であろう。出窓は建築構造的には地震力を担い、環境的には空気の流れや差し込む光をコントロール、さらに隣接する周辺環境の景色を絶妙なバランスで切り取るフレーム、そして家具としての機能も十分に確保されている。しかしこのデザインの魅力は各々の機能などを超えた出窓が造り出す空間の豊かさであろう。新たな狭小住宅の可能性を感じる作品でした。(近藤康夫)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

大雪木工の「入れる匣から入る箱」

株式会社大雪木工・大雪の大切プロジェクト

[審査講評]

住空間やオフィス空間など日本での日常の空間の場合、特に都市部において、一般的には広々しているというよリも、少し限られた空間を工夫して使っているというのが現状です。このプロジエクトは、そういった空間に対して容易に、便利さとエレガントさを備えて、木の材質感を十分に活かして、居心地の良さすらも演出できているプロジェクトです。時が経つほどに、木の温もりが空間や使う人に伝わる空間家具を創っていると思います。(喜多俊之)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

住宅のプレカット加工を用いて「家とともに家具をつくる」

一般社団法人わざわ座
株式会社山長商店
小泉 誠

[審査講評]

木造住宅のプレカットの仕口と端材等を活かした家具づくりの挑戦として評価できる。精緻なディテールにデザイナーのこだわりも感じられた。複数のテーブル、チェア、ベッドヘのバリエーションデザインも順当な解答である。応募作品コンセプトに謳われている、大工と施主の協同作業による「愛着の発生」「安心感の共有」、「ものづくり」ではなく「コトづくり」等々の思考は、今日、デザインの抱えている諸問題の一つの答えとして適切であった。(小宮容一)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

spiral chair -AKOU-

北川 八十治(K-デザイン工房)

[審査講評]

ユニークな椅子である。ねじれながら天空を目指すアコウの木のイメージに触発されたものだという。7ミリ厚の板材を螺旋状に巻き上げることで主要部材とし、独特の形状と適度なクッション性の確保を目指している。実際に腰かけてみると、肘無しタイプは坐り心地、寄りかかり心地ともに良かったが、肘付きタイプは背もたれの当たりに硬さが感じられた。肘無しタイプと異なり、背もたれを支える後脚が、下部で水平部材により結ばれているせいだろうか。肘付きタイプは視覚的な煩雑さも気になる。(清水忠男)

NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Prize

[審査講評]

デザインの世界では「モノからコトヘ」といわれて久しい。デザインの領域がどんどん広がりを感じる今の世の中で、NEXTAGE部門はモノとの関係性を様々な切り口でデザインした実験的なプロダクトまたはスペースの興味深い提案作品が集まっていました。素材の新たな魅力を探求し、ユニークな心地のペーパーコードベンチ。シェルフとしての美しさだけでなく棚の厚みを変えることで飾るモノとの関係性を意識した「pt Shelf」は日本らしい繊細な目線を感じることができました。(呉勝人)

呉 勝人賞

pt Shelf

中澤 健太郎(Interior Studio LETTER.)

大田 昌司賞

ペーパーコードの新たな魅力を探求する

半田 晴菜

Listener 〜ラジオの時間を楽しむ椅子〜

金子 実樹

air form

周 修来(武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インテリアデザイン専攻)

Repetition Chair

山本 千尋

なる

平沢 洸(九州大学芸術工学部工業設計学科)

igokochi – ペットと過ごす椅子 –

安藤 環

ohayo & tadaima

酒井 梨緒

Thermal

大澤 いぶき

組子文様の棚 – 千本格子を用いた形 –

江森 ひかる

KUSEMONO

加治 幸樹(九州大学芸術工学部工業設計学科)

papipe project

大川 翔吾

インテリアスペース部門入選 Interior Space

[審査講評]

今回の入選作品は優秀な作品ばかりだったので絞り込みは大変難しく、いつもより多い8作品となっている。地域や環境に根差したコンセプトやデザイン、工夫を凝らした作品であり、人々のつながり方など、現地を訪れた審査員が肌で感じた空気感が心地よいと居心地の良さを評価し、また細やかなデイテールが素晴らしいと感心した。今回もホテル、店舗、オフィス、住宅、観光バスといった多様なジャンルでのインテリアデザインが評価されることとなった。(木辺智子)

Hotel Oriental Express Tokyo Kamata

Katagiri Architecture+Design
One Designs

ニフコ名古屋技術開発棟

長谷川 寬・上河内 浩・杉田 陽平(株式会社竹中工務店)

– GRANDAYS グランデイズ –

佐藤 徹(株式会社エイムクリエイツ)
白壁 麻央(HAKU)・(Photo:荒木文雄)

ななめの線の住宅

井上 亮+吉村 明(IYs – Inoue Yoshimura studio inc.) (Photo by 渡邊聖爾)

HOTEL THE SCREEN “Moon Phases”

久保 秀朗+都島 有美(久保都島建築設計事務所)

社会医療法人宏潤会大同病院 -職員食堂と交流の場-

溝口 周子(+wow design associates )
日建設計

さんぽう西村本店

松井 亮(松井亮建築都市設計事務所)

Ripi

中本 尋之(FATHOM)

2020.11.24

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