JID AWARD 2019 入賞作品

Japan Interior Designers' Association - awards

「JIDAWARD」は、2019年2月~5月の間、公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした180点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づいて第1次第2次の審査を行い、現地審査や現物審査を行う第3次審査を経てゲスト審査委員の参加を得た最終審査で、大賞1点、インテリアスペース部門賞3点・入選5点、インテリアプロダクト部門賞3点、NEXTAGE部門賞10点の作品を選出した。

全体講評

選考委員長 米谷ひろし
(TONERICO:INC. 代表、多摩美術大学教授)

世の中がデザインを必要としている。しかしデザインのためのデザイナーは求められていないように感じる。デザイナーの前に、問題を解決できる人が求められている。つまり、その問題を解決するためのデザインが求められているとすれば、デザイナーも問題解決できる人にならなければならない。世相や肌感覚から、今年の印象はそのような感じだった。敢えて誤解を恐れずいえば、デザイン以上に問題解決が際立つている作品に共感し、評価されたように思う。デザインの表層的な新しさはいつの時代も人を惹きつけるものであるが、安易に想像を掻き立てられる画像に見慣れてくると、デザインを表層的、条件反射的に決めてしまう流れがあると思う。受賞作品は、プログラムの核心に迫る提案がされ、今日的なデザインだった。

JID理事長 丹羽浩之
(ヴォイド代表)

「JID AWARD」の大きな特徴として「インテリアスペース部門」は2次審査へ進んだ作品は審査員が「現地」を直接訪れ、その空間を体感するという、他のAWARDにはない特別な審査方法を採用している。昨年大賞を受賞された小泉誠さんをゲスト審査員として迎えた今回はインテリアスペース部門の応募が多く、様々な用途の空間作品が集まっていた。中でも昨今のインバウンド需要の高まりから宿泊スペース関連の応募が多く、新たに必要となる機能に対してどのようなデザインを与えていくかということを再度考え直してみるような試みを感じることができた。「今迄」「今」そして、まだ見ぬ「この先」時代の流れが早く先の見えない「今」だからこそ、それぞれ違う時間感覚がインテリアデザインにも多様に現れていた。

大賞 Grand Prix

Snail Games Japan,lnc. Office

呉 勝人 大田 昌司 (THETRIANGLE.JP)

[審査講評]

デジタルゲームコンテンツを日本で展開する会社のオフィスデザイン。エントランスよりオレンジ色のゲートをくぐると2層吹き抜けのオフィス空間が現れる。このデザインはプランを見ただけでは全体像を判読し難い。通常ならスクリーンや家具などで仕切られたスペースが存在するのが一般的であるが、このデザインの最大の特徴と魅力は、白く塗装された水平垂直方向に繋がる角柱の帯のみで全体がデザインされている事である。さらに白い帯はカウンター、ベンチ、プランターなどの機能も併せ持ち、緩やかに仕切り空間を創り出している。表層の差異だけで表現するインテリアデザインが多い中、作者の「コンセプトエレメントが装飾ではなく機能として全体の空間をまとめている」という考えはデザインが建築から自立したインテリア空間を創り出していると言える。(近藤康夫)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

ZERO SPACE

五十嵐 久枝 (IGARASHIDESIGN STUDIO)

[審査講評]

武蔵野美術大学の正門を入って右側に芝生広場があり、そこに沿って歩いて行くと、遠目に大きな石がごろごろしているのが見えてくる。近くに行ってみると、人もごろごろしている。無邪気な空気は子供のころを思い出す。そんな空気は、その場に居る人に馴染んでくる。他でもないムサビだから、そんな空気がぴったりとはまっていた。プリミティブな形態は、わざとらしくなく、むしろ美術大学として相応しいデザインで可愛らしくもあった。(米谷ひろし)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

長谷の客間、隣の住まい

田中 亮平 許 光範 (GARCHITECTS STUDIO)
株式会社山翠舎

[審査講評]

銭倉の海を見渡せる住宅街の一角に静かに仔む一棟貸しの旅館は心身ともに癒してくれる空間である。特に外国からの旅行者にとっては日本の伝統と禅の心に触れることができるインテリアとして素晴らしいと感じた。勿綸日本人にも忘れかけた日本らしい住まい方を呼びおこしてくれる住まいづくリである。オーナーは若いカップルで土地探しからスタートしたとのこと。使い込まれた建具なども使われているがそのデザイン性が逆に新鮮に感じた。宿泊客とオーナーのダイニングは同じ空間ながら、客にとってはお茶をしながらいつまでも会話を楽しみたいスペースがいくつもある旅館と言うより「家」である。
(川上玲子)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

Clinic NK—いろどり歯科•こども歯科室—

神谷 勇机 石川 翔一 (1-1 Architectsー級建築士事務所)

[審査講評]

審査を担当し、現地に伺った際、空間の居心地の良さを一番に感じた。それは光であリ、空気であり内と外の間に位置する絶妙な植栽の存在であったリする。すべての小部屋は治療のための各プースであるけれど部屋の広さや、天井高、角度など様々にデザインされ、印象的に開かれた窓が外でなく植栽の一部を見るのである。時間の経過とともに光が変化し印象も変化する。各部屋をつなぐ通路が街路のようでもあリ高い天井からの採光が設計者の言う感党的外部空間を演出している。そしてすべての細やかなデイテールが美しい空間を作り上げている。
(木辺智子)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

小泉誠賞

木々による柔らかなランドスケープ 「新しい建築の楽しさ2018展J会場構成

南俊允(南俊允建築設計事務所)

[審査講評]

JID賞の審査会に初めて参加しました。インテリアスペース部門は審査員が実際現地を訪れ、リアリティーとともに空間の気迫を感じる審査会でした。そんなスペース作品に負けず劣らずという仕事が、インテリアプロダクト部門の「木々による柔らかなランドスケープ」でした。建築の展覧会のための什器ですが、巡回展のためのノックダウンシステムも、木材らしい組み方で構造を成し美しく。なおかつ、この什器が展覧会場の空間を構築して、建築展のインテリアデザインにもなっていました。(小泉誠)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

Spring Arch

後藤 充裕 (mitsuhiro gotoh architects)

[審査講評]

大学のエントランスに設置することを目的としたこのアートワークのようなプロダクトは危なげな構造と存在感のあるフォルムから空間に緊張感を与えつつ触ってみたいという衝動的な感情を持たせる。今回現物の審査ができなかったけれど審査員一同現物を見てみたいという感想で一致した。設計者の意図する「触ると弾むように揺れる」という構造は大学の大きな空間の中で注目を受け冊子を展示する機能を超えたプロダクトになっている。(木辺智子)

インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize

Haco• Wacu

森岡 寿起 (graf)

[審査講評]

ウォールナットとナラの素材構成と垂直の造形が、スカンジナビアデザインを思わせ、好感が持てる。8種類の部材(箱と枠)から、多様な組合せを可能としている点も優れている。寸法関係が良く吟味されていて、プロポーションも悪く無い。接続金物は、実物を見ていないが、写真から見て、それなリに考案できているように思える。総じて、全体と部分が良くまとまった作品であると評価した。(小宮容ー)

NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Prize

[審査講評]

「スペースまたはプロダクトの提案・試作作品、学生作品」となるNEXTAGE部門は、インスタレーション、展示会場、地域連携活動など、興味深い作品が集まっていました。この賞に期待するところは何かと審査の様子を振リ返ると、ただ単に「モノ」の精度ではなく、モノの周辺に起こる状況や環境をいかに構築できているかが評価の対象だったようです。そんな中、日本と海外とを連携した「方丈の屋根」や、モノの周辺を捉えた「focus」には、今のプロダクトの姿を垣間見ることができました。(小泉誠)

MOKKAN

山田 寛(一級建築士事務所 LoHA)

アイマイ

田中 千絵(多摩美術大学 環境デザイン学科)

Clip Chair

今村 麻衣(武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 インテリアデザイン専攻)

focus

沖津 雄司 (YUJI OKITSU)

Billytown mobile bookshelf

-日本の木がオランダの材料と出会う

佐々木 一泰(滋賀県立大学生活デザイン学科 佐々木研究室)

blink table

早川 怜(DE-SIGNINC.)

山並み

馮 婥婷 金 世洹 宮本 葉月(専門学校ICSCollege of Arts)

ちょこん

富永 由佳(九州大学芸術工学部工業設計学科)

FLEXIBLE FURNITURE FLAT SHELF

越出 つばさ(NEW PLAIN)
協力:ultrasuede

方丈の屋根

矢野 泰司 矢野 雄司(株式会社矢野建築設計事務所)

インテリアスペース部門入選 Interior Space

[審査講評]

入選の5作品は、甲乙付け難いハイレベルな作品であった。ホテル、社員寮、ショップ、オフィスとバラエティーのあるジャンルが選ばれたが、意図したものでなく、それぞれのジャンルで優秀な作品があることを示している。インテリアが人間(ユーザー、住まい手、客、ワーカー等)のためにあることを、第一義として、第二、第三のコンセプトを設定し、デザインに挑戦し、成功しているといえる。それは、導線、木々、自然光、風、出会い、空間量、素材、人工光環境、床壁天井のデザインの整合性、地域性と多彩である。今後も、多様なデザインコンセプトを設定し、解決した優秀な作品を期待したい。(清水忠男)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所(AMTPJ)

張 棋敦 今井 敬
(株式会社メック・デザイン・インターナショナル)

THE THOUSAND KYOTO STAIRLOBBY

笹村 欽也 松森 織江 串本 佑介 東 拓郎
(株式会社東畑建築事務所)

アサヒファシリティズ蛍池寮 楓

河合 哲夫 合田 靖 大松 俊祐
(株式会社竹中工務店)

NAGAE+神宮前本店

鶴本 晶子(NAGAE+)橋本 潤 前野慧
(フーニオデザイン)

星野リゾートOM07旭川

星野リゾート・リート投資法人
株式会社星野リゾート
株式会社旭川グランドホテル
井上裕史(株式会社乃村エ藝社)
片岡照博(株式会社コトナ)

2019.11.23

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