JIDnews 269

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

TOPIC

  木のぬくもりに会えるオフィスビル

「大阪木材仲買会館」見学会ご報告

西日本エリア 八十 常充

シンボルの桜と会館の外観


火に強い耐火集成材、表面が木質の柱と梁


避難ルートにもなるバルコニー(庇、建具、床も木質)


エントランスの吹き抜けに立つ銘木見本を兼ねた耐震壁


フィンガージョイントの木口を見せた壁面


ヒノキの薄材をガラスに封入したドア


蟻加工の組み合わせでデザインされた演台


エアコンディショナーの空気孔

9月2日(水)3時から、KIPA(関西インテリアプランナー協会)主催の"2014インテリアプランニングアワード"優秀賞「大阪木材仲買会館」見学会に参加しました。尚、同会館は「JID賞ビエンナーレ2014」入選作品です。

最寄駅の大阪地下鉄千日前線西長堀駅から歩いて5分、周辺はマンションや商店、町工場に囲まれた一角に建つ3階建のビルです。 エントランスを入ると視覚的に木質に囲まれた空間のためか、プーンと木の香りが漂っているような・・・コンクリートの建物に入った時とは違った感覚。

設計を担当された㈱竹中工務店白波瀬智幸氏に説明をいいただきました。 発注元:木材仲買協同組合からの要望事項
① 木の情報発信の役割(木材の利用促進)
② 木材にゆかりのある地の位置付け(江戸時代は大阪の木場として栄えた)
③ 国産の木を構造及び内外装に使う(木の殿堂)

課題:木材は、①火に弱い ②水に弱い ③日差しに弱い、この木材の弱点を克服し、耐火性や安全性をクリアーにしながら、いかに市街地でありながら耐火構造の木を身近に感じられる空間を創り上げるかの挑戦です。
① 火に強い木の構造(耐火集成材) 「燃エンウッド」の開発、芯木材(荷重支持部)の周りに燃え止まり層(モルタル)を設け、表面に燃え代層の耐火集成材で柱、梁などの構造とする。
② 安全への配慮 各部屋はバルコニーに面した避難ルートの確保や上階延焼防止、隣地延焼防止、地震対策、津波対策など。
③ 木にやさしい外観 樹齢60年の桜の木は長年町の人々に親しまれたシンボルツリーとして存在。 この桜を取り囲むように、ゆるやかなカーブを描くようにプランされた建物は、外壁を構成する木製の建具や庇などで木質感に溢れている。
④ 天然の木に包まれた内部空間
・エントランスホールは、正面にヒノキ
 を用いた格子構造の耐震壁としながら
 銘木の見本にもなる象徴的な壁。
・壁面、フィンガージョイントの吸音機能
 を取り入れたデザイン表現。
・演台の正面は、蟻型加工を組み合わせた
 デザインの扱いが面白い。
・西側の部屋の窓は、ヒノキの薄材を
 ガラスの間に封入し、光の透過で木の
 表情を見せながら、西日除けの機能を
 備えている。
・床にビルトインされたエアコンディショ
 ナー。

随所に斬新な試みがあり見ごたえのある建物でした。今も業界の方々をはじめ、官公庁、学校関係者や海外からの視察が絶えないそうです。