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発 行 人:丹羽浩之
担 当 理 事:冨田恵子
編 集 長:八十常充
委 員 長:櫻井良樹
北・東日本エリア:小林秀徳
中日本エリア:兼子春彦
西日本エリア:魚田 純
南日本エリア:杉 佳亮
目次
令和7年度 定時総会・懇親会報告
副理事長 小野上 勝志
令和7年度の定時総会(通算第13回)は、2025年6月13日(金)、新宿パークタワー内「リビングデザインセンターOZONE」5階セミナールームにて開催されました。本年度も、会員の議決権行使は原則として書面により行う方針を継続しつつ、議場形式で開催されました。
開会にあたり、丹羽理事長よりご挨拶があり、協会が間もなく迎える創立70周年を見据え、日々の着実な活動の継続と会員相互の交流の意義について強調されました。また、DOO(日本デザイン団体協議会)との連携活動に加え、WDO(世界デザイン団体協議会)、APSDA(アジア・パシフィック スペースデザイナー団体)など国際的な組織との関係深化、さらにJID AWARDやWIW(ワールドインテリアウィーク)といった主要事業の活発な展開についても報告されました。
一方で、正会員数および会費収入の減少傾向が続いていることも報告され、新規会員開拓策や、財務・運営両面での改善に向けた継続的な取り組みの重要性が共有されました。
当日は、会員本人のご出席が17名、委任状の提出が71名、計88名の出席となり、定足数を満たしたことから総会は正式に成立いたしました。会場には理事長をはじめ理事8名、幹事1名が出席し、議長は丹羽浩之理事長が務め、総会は進行いたしました。
本総会にて審議された議案は、以下の通りです:
– 第1号議案:令和6年度事業報告(案)並びに令和6年度収支決算(案)
承認の件 (監事監査報告を含む)
– 第2号議案(報告):令和7年度事業計画並びに令和7年度収支予算・資金調達および設備投資の見込みについての報告
(上記第2号議案は法令の定めにより、理事会承認後3月末日までに内閣府に提出済み)
– 第3号議案:議事録署名人に関する件
各議案については、議長より総括的な報告および説明があり、その後、担当理事より総会資料に基づくきめ細かな解説がなされ、理解を深めつつ、円滑な質疑を経て議事は進行いたしました。
なお、令和6年度の事業計画および予算案につきましては、同年3月に理事会にて承認され、3月末日付で内閣府に提出済みである旨も報告されました。






総会終了後は、近隣のレストラン「ラビアンローズ」へと会場を移し、懇親会が開催されました。新規加入会員の紹介に始まり、各テーブルでは和やかな雰囲気の中で活発な意見交換が行われ、お酒も進むなか、久々の再会を喜ぶ声があちこちで聞かれ、参加者の親睦が一層深まるひとときとなりました。
参加者は自由にテーブルを移動しながら交流を楽しまれ、最後まで和やかで温かみのある雰囲気の中、会は進行いたしました。中締めの後、名残を惜しみつつ、帰路につかれました。




ワールドインテリアウィークインジャパン2025 & IFIワールドインテリアデー 開催報告
共催事業プロジェクト担当理事 井出昭子

「ワールドインテリアウィークインジャパン」(WIW)を、2025年5月30日(金)より6月7日(土)に東京、名古屋、神戸にて実施をしました。ワールドインテリアウィークインジャパン、IFIワールドインテリアデーついてご紹介をいたします。
日本デザイン振興会(JDP)と日本インテリアデザイナー協会(JID)が加盟する、インテリアデザイン分野での国際組織である、国際インテリアアーキテクト/デザイナー団体連合(IFI)は、毎年5月の最終土曜日、この日を「ワールドインテリアデー」(WID)と推奨しています。加盟各国が全世界共通のテーマで、インテリアデザインの役割について考えるイベント、それが「IFIワールドインテリアデー」です。
JIDとJDPは、グローバルプラットフォームの一翼を担い、この「IFIワールドインテリアデー」を含む1週間を「ワールドインテリアウィーク イン ジャパン」(WIW)として、2016年より日本各地で「人と暮らしをデザインで結ぶ国際イベント」をミッションに日本からデザイン力を発信しています。
毎年IFIから発表になる「ワールドインテリアデー」の世界共通テーマを軸として、「デザインの力で、それらを解決する方法や、デザインの役割、デザインの楽しさ」を考える場として、参加型自主企画、セミナーやワークショップなど、各種イベントをワールドインテリアウィークインジャパンの期間中に、国内各地で実施しています。
今年の「IFIワールドインテリアデー」全界共通テーマは、
「Emotive Design, Experience & AI /感情に訴えかけるデザイン、経験、AI」です。
またテーマと同時に次のようなステートメントも発表されました。
「AIは、感情が、どのようなものかを知っていますが、
それをみずから、感じることはできません。
機械はすでに、教えられたことしか、伝えることができないのです。
人間の体は、心が、忘れてしまったことでさえ、記憶しています。
「IFIワールドインテリアデー」を絡めた5月30日に日本デザイン振興会(JDP)と日本デインテリアデザイナー協会(JID)は、特別協力を頂いたシービーアールイー株式会社のアイディアラボを会場にデザインシンポジウムを実施、定員数を上回る60名の参加がありました。
■メインイベント
ワールドインテリアデー デザインシンポジウム
「デザイン表現におけるAIとの協調で生まれる次の社会」
開催日:2025年5月30日(金) 17:30-19:20シンポジウム/ 19:20-20:30交流会
会場:シービーアールイー株式会社
(東京都千代田区丸の内2丁目1-1 明治安田生命ビル21階)
総合司会:津村 真紀子(JDP事業部長)
WIW開会挨拶:井出 昭子(JID理事)
IFI挨拶:ジェイソン ホートンIFI理事
モデレーター:丹羽 浩之(JID理事長)
閉会挨拶:深野 弘行(JDP理事長)
パネリスト:
松村 佳久男 (まつむら かくお) プレゼンテーション「建築×生成AI ×異次元の温故知新」

建築家/建築ディレクター | 一級建築士事務所 株式会社カクオ・アーキテクト・オフィス 代表取締役 1967年、大阪府生まれ。大阪工業大学建築学科卒業後、建築家・高松伸氏に師事し、ドローイング制作に没頭。国際指名コンペやデザイン開発・設計の経験を経て独立し、大阪工業大学の嘱託・非常勤講師を務める。1997年にカクオ・アーキテクト・オフィスを設立し、「デザインで人を幸せに、社会を明るく!」を理念に活動。2024年から「人工知能(生成AI)」をデザインパートナーに迎え、「未来を設計する」をテーマに、デザイン監修やプロデュース、ディレクション業務を展開している。
ハウラ ベンシェクルン(はうら べんしぇくるん)プレゼンテーション「AI 、デザイナーの新しい右手」

プロジェクトアーキテクト | シービーアールイー株式会社 デザインコレクティブ
モロッコ生まれ18歳まで育つ。フランスで建築と舞台美術を学び、最終学年の建築プロジェクトをポルトガルで終え、アルバロ・シザ・ヴィエイラ事務所でインターシップを経験。フランス建築家協会認定の建築家(HMONP)であり、ラグジュアリー業界で5年以上の経験を持つ舞台美術家。さまざまな規模の国際プロジェクト
岸田 一輝(きしだ いっき) プレゼンテーション「幸福と不幸を描く生成AI」

建築家 | 一級建築士事務所 awa design studio 代表/公共R不動産 R&D事業部/公共R不動産研究所
1987年東京都調布市出身。自分の身の回りの空間を守るため建築デザインから地域・都市の分野へ活動の領域を広げ、建築デザイン/リサーチ/プロデュースを実践。千葉大学大学院(岡部明子研)修了後、都市コンサルを経て、千葉大学大学院特任助教として建築デザイン、社会学調査等の実践研究。その後、南房総で一級建築士事務所を起業し、各地の土着的な建築プロジェクトを手掛ける。公共R不動産ではコンサル業務やR&D業務、評価手法や戦略等の記事の執筆を行う。
ジェイソン ホートンIFI理事からは、IFIの国際活動およびIFI PRIZE2024に輝いた建築家 隈健吾氏の贈賞式と祝賀会(2024年11月25日贈賞式:日本デザイン振興会/祝賀会:国際文化会館)についての報告がありました。
トークセッションは、丹羽浩之JID理事長がモデレーターとして登壇、AIの現状認識、大変に興味深い問いをプレゼンター3名に投げかけ、意義深いセッションの機会となりました。
建築・インテリアデザイン、他分野でも人間とAIについて、世界中で議論が活発に展開されています。今回のデザインシンポジウムでは、プレゼンターのデザイン思考とAIデザインの実践事例から、AIデザインの今と現状認識を学びWIDテーマを深堀しました。
ご協力及びご支援を頂ました企業様、ご参加を頂いた皆様、誠にありがとうございました。





「WIW名古屋 INTERIOR MAP EVENT2025」
中日本エリア 松田芳枝
今年も「WIW名古屋INTERIOR MAP EVENT」が開催されました。5月27日~6月7日の間インテリアマップに協賛いただいています企業、ショップショールームにおきまして展示会、ワークショップなどのイベントが催されました。


WIW開催中の最大のイベント、スペシャルセミナー「ミラノサローネ映像上映&トーク」は、6月6日(金)に名古屋造形大学大ホール(名城公園キャンパス)で、建築士やインテリアデザイナー、学生など300名超が集い、大入満員の熱気の中、開催されました。


今年のミラノサローネのトレンド情報がいち早く美しい映像とともに伝えられ、参加者は大スクリーンに釘付けとなって、1時間半があっという間でした。
参加者の3分の1を占める学生たちも目を輝かせて、世界の最新インテリアに心躍らせていました。
また、大ホールに隣接したインフォメーションセンター内にJID名古屋や協賛企業様の商品紹介等が展示され、サンプルを手に取ったり、質問を受けたり、こちらも好評を博しました。


上映会終了後は懇親会が催され、70名を超える参加者により熱いトークが繰り広げられました。老若男女の参加者のみなさんの笑顔が象徴的で、名古屋のインテリアシーンの未来を明るく照らしているようでした。


IFI WID&WIW KOBE 学生プレゼンテーション&デザインカンファレンストークのご報告
西日本エリア 広報委員 魚田 純

5月10日に関西のデザイン団体(USD-O)が中心となり、WIW KOBE 2025を開催いたしました。当日の内容をご報告いたします。
このイベントは学生プレゼンテーション、クリエーターズトークデザイン新常態17th、インターナショナルデザインカンファレンストークと3部構成で、HDC(ハウジング・デザイン・センター)神戸様のご協力のもとHDC神戸ステーション広場で行われました。
■第一部:デザインカンファレンストーク1(学生プレンゼンテーション)
武庫川女子大学短期大学部 生活造形学科 2年
新出愛花さん
和モダンの住空間の提案
住宅不足に備えた新しい建材を使用したローコストモデル住宅を提案。再組立が可能な既製工業製品のみを使用して設計されています。趣味を楽しむためのスタジオと自宅を中庭でつなぐシンプルな箱型モデルで、家族一人ひとりがライフスタイルを満喫できる柔軟なインテリア提案がなされました。
浅野さん・新出さんともに、学生ならではの視点と感性が光るプレゼンテーションでした。
神戸芸術工科大学 プロダクト・インテリアデザイン学科
阿部里玖斗さん
COSME Nouveau(コスメ・ヌーヴォ)
コスメ会社と美術館のコラボによるPRショールームの提案。アルフォンス・ミュシャの作品をモチーフにしたコスメ商品を、「新しい自分になるために試してほしい」という想いを込めて、効果的にPRする新しい方法を提示しました。商業施設でのショールーム開催を想定し、美術ファンとコスメ好き双方の顧客層を引き込む導線計画も考えられており、実現性の高い内容でした。
神戸女子大学 家政学科
大西朋佳さん/竹中萌唯さん/松木ひよりさん
学内改修プロジェクト moi-meme「私自身」ができるまで
実践プロジェクト「モアメーム」。大学内の空き教室を、くつろぎと自己対話の場に変えるため、企画から施工まで学生自身の手で挑戦しました。漆喰塗りの壁、手づくりのファブリックボード、ベランダの緑化など、細部にまでこだわった提案です。特にこたつを設置した温もりある空間は、訪れる人の心をほっと和ませてくれます。完成したラウンジは学生・教職員の間で人気を集めており、今も“生きた空間”として活用中。発表では「利用者の声を聞き続けながら、進化させたい」と語る姿が印象的でした。
東京都市大学 都市生活学科 4年
川崎詩織さん
“Bloom where”
金魚鉢という特殊な空間に合わせ、空間に馴染みながらも心と身体が自然に緩む時間を豊かにすることを目的に考えられた、リラックス用チェアの設計提案でした。見た目のデザインだけでなく、座ったときの角度検証を行い、身体で感じる座り心地を大切にしています。視線(アイレベル)や収納などの機能性まで考慮されており、制作まで手掛けたことで多くを学んだそうです。今後の作品が楽しみになる発表でした。
国士舘大学 建築学系 3年
位田達哉ゼミナール
石川佳央璢さん/戸鞠凌さん/長瀬公亮さん/植草渉さん/遠藤朱莉穂さん
小商いをもつ都市型集合住宅の設計+α
課題作品を活かして豊かな空間へ再構築できるか?
「AIと建築が出会ったら?」をテーマに、世田谷駅前の商業と住宅をつなぐ中間領域をデザインする都市型集合住宅提案を発表。生成AIを活用した内観パース作成にも挑戦し、設計者の想像を超える提案をAIとともに導き出しました。それをベースに3Dプリンターでコーヒーカップを制作するなど、テクノロジーとの共創が注目を集めました。専門家からは「中間領域の提案の深さやAIとの関わり方の可能性」に高い評価が寄せられ、未来の建築を考えるうえで刺激的な発表となりました。
九州産業大学 大学院芸術研究科 修士2年
田代夢乃さん
「水を表現する」
卒業研究から修士までの活動報告
水をイメージしたドレッサー、結婚式のテーブルディスプレイ、水妖の棲家など、現在手掛けている4作品について発表。どれもストーリー性があり、五感に訴えかけるデザインです。企画が練られており、写真や動画を用いたわかりやすいプレゼンテーションが印象的でした。
九州大学 芸術工学部 インダストリアデザインコース
古賀山士さん
「はせる」
都市環境に住む人が心で自然環境を感じられるデザインを提案。森の空気を部屋で味わい、そこに生きる動物のことを思いやる時間を持つことで、心が豊かになり、環境問題についても考えられるようになることを願って制作されました。細部にまでこだわり、豊かな自然環境で育った経験が生かされたデザインです。
九州大学 芸術工学部 インダストリアデザインコース
中島諒子さん
「おぼろづき」
幼少期からおばあさまに連れられ仏像を見に行く機会が多かった中島さん。いつかは仏像を作りたいという思いから、今回木彫りのインテリアに挑戦しました。雲の彫刻細工や、千手観音の持ち物「月精摩尼」をモチーフに、月を照明に見立てたランプシェードを制作。普段はスタンドライトとして使用し、取り外すと千手観音の「月精摩尼」を手に取るように楽しめる遊び心あふれるデザインです。
沖縄県立芸術大学 美術工学部 有志の皆さん
世界の若手デザイナーの登竜門とも言われる国際展示会「ミラノサローネ・サテリテ」に、厳しい審査を通過して出展。素材や形状、メッセージ性にこだわった制作過程を共有しました。3年生は初めての海外展示で緊張と刺激を体験し、英語でのやりとりにも苦労しながらも来場者の感想を直接聞く貴重な経験に。4年生は2度目のチャレンジで学んだことを分析・発表しました。異文化の中で自分たちの感性をどう表現し、届けるかを考える姿が印象的で、「様々な経験が、これからのデザイン活動の糧になる」との言葉に、未来への確かな一歩を感じさせられました。
大手前短期大学 ライフデザイン総合学科 建築・インテリアコース
橋本研究室 with S.I.LAB
KOBE ISU TEN(神戸家具とこれからの椅子展)
WIWイベントと連動し、神戸のイベント「BE KOBE」に参加する想定で情報を収集。「永田良介商店」の家具を展示する企画をHDC神戸で実施するとしたら、というテーマで動画によるプレゼンテーションを行いました。


プロダクト•インテリアデザイン学科
阿部里玖斗さん


田代夢乃さん




建築インテリアコース藤本研究室
with S.I.LAB 学生のみなさん

糸満千さん、藤村奈央さん、前原芽衣さん
比嘉優恵さん、上原正大志さん


ゲストコメンテーター
【USD-O,JCD】齋藤 俊二(USD-D会長、JCD関西支部統括委員長、株式会社スペース企画デザイン部部長)
【USD-O,DSA】大森 あき子(USD-O理事、DSA副会長、有限会社大森デザイン事務所 取締役)
【JAIPA K】小梶 吉隆((一社)日本インテリアプランナー協会関西会長、京都美術工芸大学 特任教授)
【JASIS K】郭 雅雯(クォ ヤウェン) (安田女子大学建築学科 准教授、日本インテリア学会会員、JAIPA K会員、日本インテリア設計士協会(SJIT)京都理事)
【JAFICA,IDM】 平田 貴子 ((一社)日本フリーランスインテリアコーディネーター協会理事、株式会社moi)
【USD-O,JID】 金沢 ちかこ(USD-O会員、(公社)日本インテリアデザイナー協会、摂南大学非常勤講師)
■第二部:デザインカンファレンストーク2(クリエーターズトークデザイン新常態17th)
テーマ:人の心を動かすデザインとこれからの暮らし
「産学連携による国産木材の活用・発信プロジェクト」
曽根 里子 氏(文化学園大学 造形学部建築・インテリア研究室 准教授/一級建築士/生活環境学修士)

多摩産材を活用した産学連携プロジェクトについての発表でした。このプロジェクトでは、学生がインテリアデザインの授業の一環として多摩産材を使った家具や小物をデザイン・制作し、展示会などで発信しています。若い世代に国産材の魅力を伝え、活用を促進することを目的として取り組まれています。
学生たちは木材の生産現場の見学や加工体験を通して理解を深め、それを作品制作に生かしています。展示会では業界関係者からのフィードバックを得る機会もあり、今後は卒業後も国産材の活用に貢献できる人材の育成を目指しているとのことでした。
「高田ゼミ・ミラノサテリテへの挑戦」
高田 浩樹 氏(プロダクトデザイナー/沖縄県立芸術大学 准教授)

今回の学生プレゼンテーションでも触れられていた、ミラノサローネサテリテへの挑戦。高田氏からは、沖縄県立芸術大学で実際に取り組まれているプロジェクトについて、具体的な事例を交えながらお話しいただきました。
「サスティナブルな土のマテリアルの研究から未来へ繋ぐ思考」
木野内 剛 氏(株式会社日本設計 プロジェクト管理部 上席主管)
福原 ほの花 氏(株式会社淺沼組 戦略企画本部技術研究所 建築材料研究グループ/GOOD CYCLE DESIGN G)

福原 ほの花氏 株式会社淺沼組 戦略企画本部技術研究所 建築材料研究グループ/GOOD CYCLE DESIGN G
淺沼組と日本設計が連携し、循環型建築素材と店舗デザインの開発に取り組んだプロジェクトについての発表でした。
淺沼組では、建設発生土を活用した「カンプチブロック」や立体削りによる土壁技術を開発し、名古屋支店の改修プロジェクトに活用された事例が紹介されました。
一方、日本設計では、豊洲の商業施設「千客万来」内の店舗「芋松」のデザインにおいて、畑の土を内装に取り入れた事例について報告がありました。
両社は今後、3Dプリンターによる土の活用や、建設発生土のレシピ化など、さらなる技術開発を進め、サーキュラーエコノミーの実現と日本の伝統的な風景の再構築を目指していくとのことです。
「心ときめくデザイン ―ミラノから」
安藤 眞代 氏(studio Ma 代表/(公社)JID 理事/中央工学校OSAKA 非常勤講師)

ミラノサローネで展示されているデザインの傾向について、写真を交えながら解説いただきました。ミラノデザインウィークに関するリアルな情報を伝えていただき、現地の空気感を感じられる内容でした。
詳しくは、JIDnewsの該当号に掲載されている安藤氏の記事もあわせてご覧ください。
「感動と共感が生まれるこれからの商業施設」
齋藤 俊二 氏(株式会社スペース 企画デザイン部 部長/JID統括委員長/大阪デザイン団体連合(USD-O)会長)

名谷駅 × 須磨PATIO リノベーションの事例についてプレゼンテーションいただきました。企画内容から提案パース、施工事例まで、動画を用いてBefore・Afterを比較しながらの解説は非常にわかりやすく、今後の商業施設づくりにおいて何が求められるのかについても触れた内容でした。
デザインの意図と空間の変化が丁寧に語られ、来場者からも大きな関心を集めていました。

■第三部:インターナショナルデザインカンファレンストーク
テーマ:人の心を動かすデザインとこれからの暮らし
「文化スパイラルから創るシノワズリ・インテリア」
石川リサ 氏(リサブレア/IFDA JAPAN Member)

インテリアデコレーションを手掛けるリサブレア代表・石川リサさんより、壁紙やファブリックデザインの事例を交えて、シノワズリの魅力についてご紹介いただきました。
東洋と西洋の文化交流の歴史を踏まえ、現代においても互いの文化に憧れを持つ傾向が続いているという視点から、日本人としてシノワズリの魅力をどう表現するか、また海外のアーティストとの協働による挑戦についても語っていただきました。美しいビジュアルとともに、文化の奥深さを感じさせる発表でした。
「リベラルアーツとデザイン思考で実践する超高速プロトタイピング」
川向 正明 氏(リベラルアーツ実践家)

「リベラルアーツとは何か?」という問いから始まり、AI時代における人間の考える力の重要性、そしてデザイン思考と高速プロトタイピングの必要性について、豊富な事例とともにお話しいただきました。
日本文化やアニメの話題とリンクしながら展開された内容は、発想力を刺激する非常に興味深いものでした。
詳しくは、ぜひYouTubeで公開されている動画をご覧ください。
「AIヴィジュアライゼーションが変えるデザインプロセス」
富家 大器 氏

独自のデザイン資産を活かしたAIの展開例から始まり、構想段階でのアイデアを設計図なしでビジュアル化するプロセスについて紹介されました。
インテリアだけでなくプロダクトデザインにも応用可能で、ラフスケッチからイメージをヴィジュアル化できるプラットフォームの存在や、設計・3Dレンダリングなしで提案モデルを生み出す技術がすでに活用されているとのことです。
AIによる多数の提案からデザイナーが最終形をまとめていくというプロセスは、今後のデザインのあり方を大きく変えていく可能性を示唆していました。プレゼンの最後には、「AIの時代において、デザイナーの役割とは何か?」という問いが投げかけられ、今後の方向性を考える貴重な機会となりました。
「Emotive Design Experience & AI from SIDS」
Tung Ching Yew 氏(SIDS会長)

シンガポールのデザイン組織「SIDS」代表であるTung Ching Yew 氏からは、感情的知性を重視したデザイン思考的アプローチについてのプレゼンが行われました。
身が設立したデザイン事務所「SODA」の取り組みを通して、サービスデザインと体験デザインを融合させ、クライアントのニーズに応える空間づくりを行っていることが紹介されました。
具体的な事例としては、シンガポールのラミネートブランド「Admira」のショールームや、マレーシアの「RHB銀行」支店のリデザインプロジェクトを挙げ、AIを活用したビジュアライゼーションやコンセプト作成の効率化についても言及されました。
さらに、ペットショップや観光名所内のレストランの最新デザイン事例も紹介され、AI時代におけるエモーショナルで実用的なデザイン手法の可能性が感じられる発表でした。

WIW KOBE「USD-Oモノ・空間デザイン学生・クリエーターズ・エキシビジョン」学生プレゼンテーション参加
南日本エリア 広報:杉 佳亮

関西のデザイン団体USD-O共催の IFI WID&World Interiors Week KOBE 2025「学生・クリエーターエキシビジョン&学生プレゼンテーション」にJID南日本エリアから3名の学生が登壇し、zoomプレゼンという制約がありながらも見事3名ともに輝かしい賞を受賞されました。
最優秀賞を受賞した九州大学芸術工学部の中島諒子さん

優秀賞を受賞した九州大学芸術工学部の古賀山士さん

優秀賞を受賞した九州産業大学大学院芸術研究科の田代夢乃さん

それぞれパネリストの方々から「今すでにカタログに載ってそう」とか「それが欲しい」「幸せを感じるプレゼンだった」などと称賛が相次ぎ、学生皆さんの感性や考察が大変評価されていました。




3名ともに「学生インテリアデザインコンテスト」でも、今回の「学生・クリエーターエキシビジョン&学生プレゼンテーション」でも輝かしい賞を受賞されました。この経験を糧に今後デザインやものづくりを通して、世の中に感動やワクワクを与えたり、将来的にJID AWARDやJIDの活動にも繋がっていけば嬉しく思います。
今後も参加学生の輪を広げながら南日本エリアの活動を盛り上げて行きたいと思います。
ミラノデザインウィークの魅力(202504視察より)
西日本エリア理事 安藤眞代
長年視察しているミラノデザインウィーク(MDW)。今年はFiera Milano, Rho(ロー・フィエラミラノ)のミラノサローネ国際家具見本市本会場はもちろん、市内でのインスタレーション、展示会も様々時間をかけてたっぷり視察しました。





ミラノデザインウィークがロンドンデザインウィークや、パリのMaison & Objet、他様々な海外インテリア展示会と最も違うといつも思うのは、その圧倒的な街を挙げての規模の大きさです。
近年会場とは別に、市内会場でのショールームでも行う海外展示会は様々あります。しかし、メーカーの力の入れ方(お金の掛け方も)が、MDWは飛び抜けてB I G! その会場も日本ではあり得ない様な、歴史的なパラッツォ(邸宅)や、宮殿、修道院、そして使用されている大学、美術館でのインスタレーションはその背景も加わり圧巻です。
またここ近年、ラグジュアリーなファッションブランドや、ファッションザイナーが、自らのファッションのライフスタイル提案する、家具や照明、ホームテキスタイルも含めた「ホーム・コレクション」を展開しています。「ルイ・ヴィトン」はここ数年、歴史ある優雅なセルベローニ宮殿での展示を行っているが、ファッションブランドの展示は大変人気があり、インテリア業界だけでは無い集客も含めて、要に数時間並ぶ人気でした。
ルイヴィトンが2012年から展開する「オブジェ・ノマド コレクション」は、美しいセルベローニ宮殿の背景と、熟練した技術を持つ職人たちの共創したアーティなコレクションが見事にマッチした展示会でした。




クラフトマンとの共創は、他の展示でも多く見られました。
海外のSNSでは大変注目度が高く、3時間待ちの長蛇の列だった「L’Appartamento by Artemest 2025」は、イタリアの職人技と、国際的に高く評価されている6つのインテリアデザインスタジオの視点を通してキュレーションされた、素晴らしい空間を創りあげていました。
19世紀の建築の傑作、パラッツォ・ドニゼッティを会場に、その建物が持つ芸術的遺産の物語が息づく空間魅力を、各デザイナーが最大限に活かし、デザインの美しさ、独自性、創造性を優雅に、イタリアの卓越性を象徴する芸術性と伝統を体感できる空間を作り上げていました。
インテリア空間としては、この会場が芸術とデザイン性、クオリティと共に、今回の美しさBest! 一番心に響いた展示でした。


また、 Osanna Visconti (オザンナ・ヴィスコンティ)アトリエ兼アパートメントでの展示新作テキスタイルコレクション「Hemispheres Collection」は、Hosoo x Dimore Studioでの展示。京都•西陣織の細尾は、ここ数年積極的に海外展開を行なっており、今年はデザインディオDIMORESTUDIOとの光と影が交錯する幻想的なインスタレーションコラボレーション展示が話題でした。日本のテキスタイルの伝統美と技術、イタリアの感性と技術が融合した唯一無二の空間を生み出していました。



Flexform(フレックスフォーム)は、歴史的なキオストロ・サンタンジェロ修道院の回廊を展示会場としたアウトドアコレクションを発表した。雰囲気のある修道院の大きな中庭にゆったりと配置された、フレックスフォーム新作のキャメロットと多用途に使えるオアシスファミリーは、ブランドの屋外用ラインアップの象徴的な作品と並んで展示されました。
この様に歴史的な場所でのインスタレーションは、その背景も加わり、大変壮大で美しく、ミラノデザインウィークの最大の特徴です。

さてFiera Milano, Rho(ロー・フィエラミラノ)本会場は、今年はエウルルーチェ(照明)の年です。FLOSやArtemide(アルテミデ)など大手ブランドメーカーが大ブース展示をする中、日本のポータブル照明ブランドAmbientec(アンビエンテック)は、既存コレクションを担当してきたデザイナー4名からアップデートを遂げたコレクションを発表しました。今年のエウルルーチェでは、日本から唯一の日本メーカー出展です。今回のデザイナーの一人、松山祥樹さんにお話しを聞くことができました。新作の「Barcarolle」は、大変美しく特徴のある照明で、MOOOIを率いるマルセルワンダースも思わず立ち寄ったとのことです。ヨーロッパの文化と歴史からのインスピレーションを受けて、クラシックとモダンが一つに調和したかのようなポータブルランプは、大変優雅なイメージを受けました。




ここ近年に見られる室内家具は、サークルや丸みのあるソファ家具や、デスクばかりで、角のシャープな家具はほとんど見られません。この傾向はまだ暫くは続くと思います。また、数年前から続く傾向で、アウトドア家具とインドア家具との境界線が無くなり、どちらでも提案可能な家具が増えています。張り生地には撥水生地だけではなく、リゾート感ある縄に見える、織り調リサイクル素材(樹脂)を使っているブランドも多く見られました。海外ブランドはもう大きくリサイクル素材、環境とは謳っておらず、当たり前にカンパニーとして環境責任と、持続可能な生産活動への配慮を重視した取り組みをしています。
カラーは、圧倒的に赤暖色系〜シックなローズ系から、ブラウンレッド〜ワインレッド〜バーガンディと、商品だけでなくブースカラーにも多く見られました。
ガラス素材にも変化が見られます、透明なガラスより光が入ったとき柔らかになる、ボコボコとしたすりガラス調のガラスのセンラーテーブルや、照明がここ数年増えています。家具が丸みを帯びたと同じ、コロナ禍を経て人間に優しい、柔らかさが求められているからかも知れません。
十数年前からミラノサローネ、ミラノデザインウィークに行っていて、だんだん事前予約無しには入りにくい市内ショールームや、本会場さえも予約なしでは見ることが出来ないブースがかなり増えてきていると感じました。ブースの前で名刺を出せば良かったのが、受付のキュアールコードで、携帯で登録し、全てアンケートまで打ち込まないと入れないとなると、限られた時間の中、かなりの時間が取られることに少し疑問を感じて仕方がありません。
とはいえ、予約をすると入れないコーナーに入場出来、優先的に説明案内をして貰えると、商品への理解度が深まり、それもありかとも思ったりもします。
ミラノデザインウィークに行き続け、定点観測をする中、年々規模も大きくなり、展示地域も増え続け、1週間あっても全てを見ることは叶いません。
また様々形は変わって来て、毎年行く必要もないのではと思ったりもしましたが、やはり冒頭で書いた通り、その圧倒的な規模と街中のFuori Salone(フォーリ サローネ)の素晴らしさが、ここに毎年来てしまう理由です。
イタリアの歴史的なパラッツォ(邸宅)や、宮殿、修道院などの建物が持つ芸術的遺産を活かした魅力的な空間インスタレーション、展示。そしてブランドやメーカーの感性と技術の融合した唯一無二の圧倒的空間は、ここミラノに来て、実際にその空間に立ってこそ、感じる風景でした。


2025.07.12