JID AWARDとは
1958年に活動を開始した「公益社団法人日本インテリアデザイナー協会(JID)」は 1969年に「JID協会賞」として日本のインテリアデザインの質と認知度を高めるため、 優れたデザイン作品や関連活動の表彰を始めたのが「JIDAWARD 」のルーツであり、 60年以上の歴史あるAWARDです。 本年度は、昨年度大賞受賞の「Concrete Log House」の井川 充司 ( IKAWAYA建築設計 )さんをゲスト審査員として招き、223作品の応募の中から厳正な審査を行いました。 また、インテリアデザイン業界の更なる発展を願い、「インテリアスペース部門」「インテリアプロダクト部門」「NEXTAGE部門」3部門それぞれに「金賞」「銀賞」「銅賞」を新設し、計31作品を選出しました。
受賞作品は公式ウェブサイトで発表するとともに、西新宿にあるリビングデザインセンター OZONEにて受賞作品展を行います。
全体講評
JID理事長 丹羽浩之 (ヴォイド代表)
「JID AWARD」の大きな特徴として「 現地審査」「現物審査」があります。「インテリアスペース部門」2次審査通過作品においては審査員が全国の「現地」を直接訪れ、施主やデザイナーから設計コンセプトなどの話を聞きながら、その空間を体感するという他のAWARDにはない特別な審査方法を採用しております。本年度は、31作品の現地へ伺い、写真や図面では分からない空気感やディテール、作品のストーリーを感じ、厳正な審査を行いました。また「インテリアプロダクト部門」2次審査通過の13作品は「実物」作品を審査員が触れて使って、審査を行いました。応募された作品の多くは、「生活スタイルの多様化」「働き方の変化」「社会問題への問題意識」など多様性や価値観の変化に「インテリアデザイン」の力によって対応していく作品や「空間と空間の緩やかな重なり」によって「新しい領域」を構築するような「インテリアデザイン」による「機能」の規定を明確としない表現をした作品が多く、既成の領域概念に変化を促す意欲的なデザインを感じ取れました。「人と人の関係性」や「人と社会の関係性」を見直すことを促すように、緩やかに変化する価値観に寄り添いながら生まれる新たなインテリアデザインの可能性と重要性を再確認することができたAWARDとなりました。
JID AWARD 2024 審査員
ゲスト審査委員 (2023年度 大賞受賞者)
井川 充司 ( 株式会社IKAWAYA建築設計 代表取締役)
JID 選考委員会
安藤 眞代 ( インテリアデザイナー、スタジオMa代表、選考委員)
海老沢 宏 (海老沢宏環境工房代表、選考委員)
木辺 智子 (インテリアデザイナー、株式会社フォーラム取締役、選考委員)
小宮 容一 (インテリアデザイナー、芦屋大学名誉教授、選考委員)
近藤 康夫 ( インテリアデザイナー、近藤康夫デザイン事務所代表、選考委員)
酒井 浩司 (SIA代表、国士舘大学理工学研究所フェロー、選考委員)
清水 忠男 (共生環境デザイナー、千葉大学名誉教授、選考委員)
米谷 ひろし(TONERICO:INC.代表、多摩美術大学教授、選考委員長)
丹羽 浩之 (ヴォイド代表、JID理事長)
(敬称略/五十音順)
大賞 Grand Prix
竹中育英会学生寮
垣谷 伸彦 佐田野 剛 眞鍋 展仁 熊谷 雄(株式会社竹中工務店)
[審査講評]
東京郊外 練馬の典型的な住宅地の中で静かに迎えてくれたのは、小さな外部庭に続く東屋を持つエントランス空間。ここから本体の学生寮まで続く、この建築を象徴するL字型の木造曲面屋根と中庭が自然と建物内部空間に導いてくれる。この屋根の下に共用部の諸施設ラウンジ、食堂等が収められ、さらにライブラリーと言われる通路スペースを挟みコンクリート造による寮の個室空間が続く。この個室は、型枠が内装仕上げ及び家具として生かされているため狭さを感じさせない。広さや材料、工法、機能等がよく考えられているため心地よい空間に仕上がっている。さらに、この建築で重要なスペースは外部に繋がる中庭の存在であろう。地域の植生などを考慮し選定された植物、そこに集まる鳥や虫などの生物の多様性に配慮された庭空間は内部とも連動するグローイングインテリア、成長するデザインとも言える。前の寮を残しつつ建替えをする計画がこの建築や中庭を生み出し、周辺環境にも良い結果を生み出している。静けさを保ちながらも今後を支える人材の育成に繋がる作品と感じた。(近藤 康夫)
インテリアスペース部門 金賞 Interior Space Prize
菰野花苑
川本 達也(川本達也建築設計事務所)
佐々木 直喜(菰野花苑) 辻 伴壽(辻木材株式会社)
[審査講評]
独自の感性で日本の情緒美と数奇的な間が織りなす作品を作り出す花匠と建築構造をインテリアに美しく作り上げるデザイナーが協働し、完成したこの建物はどこを見ても美しい風景で来店者を魅了している。あらゆる季節の花々、植物を建築とともに楽しむことが出来る素晴らしい建築である。 (木辺 智子)
インテリアスペース部門 金賞 Interior Space Prize
Hair room TOARU
関口 貴人(関口貴人建築設計事務所)
[審査講評]
床から天井に至るまでの大きな鏡を持つRC壁と梁の無い長スパンのCLT屋根、それらを繋ぐ広いガラス開口や換気口によって構成された空間は、機能的であるに留まらず、美容院における、顧客の「見る・見られる」意識を満足させる素晴らしい演出となっている。 (清水 忠男)
インテリアスペース部門 金賞 Interior Space Prize
岸田電業本社
中園 美博 小川 敏之 山原 康弘(株式会社twha)
[審査講評]
木造枠組み壁工法2階建。外輪山を望む2階部の用途は事務所。構造は枠組み壁パネル、床版、屋根折版からなり折版の方向は放射状に外輪山へ向かう。1階ピロティから2階事務所さらに屋根まで連続した壁版がそのまま空間のデザインになり、開口部は山への指向性を持ち、空間は無方向性の楽しさを持つ。 (海老沢 宏)
インテリアスペース部門 銀賞 Interior Space Prize
COFFEE COUNTY Tokyo
干田 正浩( 株式会社MHAA)
[審査講評]
住宅街の角地にあるカフェ空間は、象徴的な楕円形の平面の中に一回り小さな楕円のカウンターと外壁に沿う形で配置されたベンチの2つの要素で構成されている。吟味された煉瓦やガラスなどのマテリアルによりシンプルな空間に重厚なイメージを創り出している。(近藤 康夫)
インテリアスペース部門 銀賞 Interior Space Prize
ザ ロイヤルパークホテル アイコニック名古屋
黒栁 亮 柳澤 隆 長谷川 裕馬 馮 植 冨田 茉理奈 (株式会社竹中工務店)
[審査講評]
旅する中部をテーマに、中部十県の様々なプロフェッショナルと共創して出来上がった空間はホテルにいながら旅をしている気分になれる魅力が溢れている。歴史的背景やものづくりの現場を体感できるボリュームある空間、遊び心を感じる隠し部屋など様々な工夫が魅力的である。(木辺 智子)
インテリアスペース部門 銀賞 Interior Space Prize
sunny bitters 葉山の住宅
真泉 洋介(株式会社プラスマイズミアーキテクト)
[審査講評]
建築家ご夫婦の自宅計画である。周辺環境との段差を室内にも引き込み、立体的にめぐることができる連続空間となっている。そこに与えられた素材や豊かな色彩が様々なシーンの背景を引き立てており、外部との爽やかなコントラストも印象に残った。(米谷 ひろし)
インテリアスペース部門 銀賞 Interior Space Prize
れんがの家
山本 郁江(株式会社トコト一級建築士事務所)
住谷 素子 垣田 淳(KSA)
[審査講評]
既存の組積造倉庫の保存と増築。RCで補強した組積造+RC壁構造に木造枠組み壁工法の小屋組を木造ワーレントラスの軸組で受けるという混構造形式である。そして外断熱方式をとり、それらの構造がそのままインテリアの特性としてデザイン化されている。とても豊かな室内空間の室用途に合致している。(海老沢 宏)
インテリアスペース部門 銅賞 Interior Space Prize
ラジアル アンプ ハウス
谷口 幸平(株式会社 and to 建築設計事務所)
[審査講評]
限られた都市空間において、デザインの力で空間の境界を拡張し、豊かな住空間を実現した住宅である。台形状の敷地を巧みに生かし、奥行きを深く感じさせる配置。放射状の垂木と南庭の配置が、自然光を最大限に取り込み、広がりのある空間を演出している。(酒井 浩司)
インテリアスペース部門 銅賞 Interior Space Prize
わかばかぐ
小泉 誠 田村 正敏(Koizumi Studio)
[審査講評]
本リノベーションは、若葉家具の製品を、ユーザーやデザイナーに周知すると共に「府中家具」業界の復興への意気込みが、充分に感じられた。全体はデザイナーのメソッドやフィロソフィーが明解にスペースやプロダクトに表現されていて、心地良い空間であった。(小宮 容一)
インテリアスペース部門 銅賞 Interior Space Prize
ITOMACHI HOTEL 0
渡瀬 育馬 内海 大空(Dugout Architects)
[審査講評]
日本初のゼロエネルギーホテルで、「うちぬき(自噴井)」、「伊予青石」など、地域に根付いた文化資源をベースにデザインを展開し、美しくカラースキームされた各スペース、客室内装が目を引きました。客室正面、うちぬきを想起させる、ガラスの美しい水場デザインにも心おどりました。(安藤 眞代)
インテリアスペース部門 銅賞 Interior Space Prize
多摩市立中央図書館
渡辺 猛 河田 健 青江 悠 大西 真昴(佐藤総合計画)
酒匂 克之(丘の上事務所)
[審査講評]
高低差のある敷地特性から、明るく開放的な上階と、静かにこもれる下階という、異なる2フロア構成の空間となっている。建築構造を室内の表情として巧みに置き換え、書架や空間エレメントと見事に調和した空間は、様々な居場所を生み出していた。(米谷 ひろし)
インテリアスペース部門 銅賞 Interior Space Prize
Gray Syncretic House
寺岡 徹(OOTT | 寺岡徹建築事務所)
[審査講評]
築50年のマンションリニューアルデザイン。施主家族の生活の中で重要なキッチンを中心に計画され、南面開口部全体に設置された縦格子は光、風をコントロールする。様々な職人の技術による納まりや素材が陰影を生み出し、心地よい空間デザインに仕上がっている。(近藤 康夫)
インテリアスペース部門賞 井川賞 Interior Space Prize
まきのさんの道の駅・佐川
佐藤 八尋 市川 幸平(若竹まちづくり研究所)
中本 剛志 田中 裕一(STUDIO YY)
高橋 晶子 高橋 寛(ワークステーション)
[審査講評]
高知県産のスギ一般製材を用いた木構造は、周囲の山並みと調和し、大空間を提供し、市民が自由に活用できる場となっている。インテリアと風景のスケールを巧みに調和させ、雄大な自然の中で人々が集う拠り所を創出している点を高く評価したい。(井川 充司)
インテリアプロダクト部門 金賞 Interior Product Prize
Forêt(フォレ)
鬼木 孝一郎(株式会社鬼木デザインスタジオ)
[審査講評]
最初の印象はバッタの集団であった。しかし、伝統の組子で、それも平面ではなく立体である。ここまでやるかと感動した。デザイナーの卓越したアイデアと職人の技巧・技術の融合であり、そこからくる完成度の美しさである。複数個をインテリアに配する発展も期待できる。(小宮 容一)
インテリアプロダクト部門 銀賞 Interior Product Prize
BEACON
片山 純 荻原 優 長崎 美綺(株式会社 New Classic)
[審査講評]
直線的なフォルムとミラーガラスがとても美しいフロアランプでした。インテリア空間で、消灯時にもアートピースとしての存在感を発揮してくれそうな照明です。(安藤 眞代)
インテリアプロダクト部門 銀賞 Interior Product Prize
ORIICHI < Foldable market stall >
川本 尚毅( N and R Foldings Japan)
[審査講評]
地域特性を生かし持続可能なマルシェ文化を創出するためのユニークな什器である。地域産業連携による高品質なものづくりが特徴であり、コンパクトな収納性と拡張性の両立は、多様なイベントに対応でき、移動販売やポップアップストアの新たな可能性を広げている。(酒井 浩司)
インテリアプロダクト部門 銅賞 Interior Product Prize
Metal Spinning Lamp / へら絞りのランプ
藤 致滋(藤致滋建築設計)
[審査講評]
金属を同じ寸法で加工し、その仕上げを様々に試みている。照明器具としては、どれも違いが感じられない中にあって、多数の穴を開けた1点は、絞りが進むにつれ、穴の形状が伸びてゆくのがおもしろく、内部からの光の漏れの変化を見てみたいと思わせられた。(清水 忠男)
NEXTAGE部門賞
[審査講評]
応募作品には、斬新な試みや時代への提案といった挑戦的姿勢のものが多く見られた。金賞を受賞した「Shiki」は、厚み3mmほどの面に規則的な凹凸を持たせた上に、特殊なUVプリンターを用いて印刷することによって、見る場所や角度によって、色彩が四季の移ろいのように変化して見えるという壁面演出の提案だった。銀賞の「紙管で創る避難所ブース」は、その表題通り、紙管ユニットによる組み立てシステムで、避難所で簡易に構成できる居場所の提供を目指している。災害の多いこの国では、こうした試みが具体化に繋がり、非常時に活用されることが望まれる。他の応募作品にも、利用意義を考えさせるものが多かったことは、高く評価されてよいだろう。(清水 忠男)
NEXTAGE部門 金賞 NEXTAGE Prize
Shiki
大栁 友飛
NEXTAGE部門 銀賞 NEXTAGE Prize
naminui light
岩井 優典
Slits stool
原 優ノ介(武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科)
Kintoun Kits
杉浦 泰偲(名古屋芸術大学大学院 デザイン研究科)
紙管で創る避難所ブース
佐藤 哲(熊本県立大学 環境共生学部 佐藤研究室)
NEXTAGE部門 銅賞 NEXTAGE Prize
sail
田中 智也(冨士ファニチア株式会社)
ply mammoth chair
千勝 菜津子
Arc Chair
加藤 鷹(アシタカ建築設計室)
電子通知音をアナログの通知音に置き換えるプロダクト提案
清水 透和(東京工科大学大学院デザイン研究科 相野谷威雄ゼミ)
面
于 宙
NEXTAGE部門 奨励賞 NEXTAGE Prize
EN
劉 翀宇(大阪芸術大学大学院)
PET AND WOOD CHAIR
中里 文乃
温泉地におけるサプライズ型 “光のラブレター” の試み
梅田 かおり(ライティングデザインスタジオLUME)
八巻 春香 鹿野 護(宮城大学)
かの まき子(菜園雑貨UP )
村岡 哲(AKIULUMINA)
2024.11.28