長さんのデザイン人生は、第二次大戦で中断された日本の近代機能主義理念の開花を担った生涯と云えましょう。
彼は大正10年の生まれ、欧米の自由主義的近代思潮が直接に日本の大衆社会に影響し始めた時代でした。しかも帝国主義による満州事変から太平洋戦争ヘの拡大の中で、学校(彼は東京芸大)へ入りながら勤労動員へ、戦場へと駆り出され、敗戦でそのまま社会へ出ざるを得ない世代でした。そして戦時の技術革新を含む 戦勝国の文明と対しながら荒廃した日本の再生への運命を担った ことです。もう一つの特徴は仕事の原点を坂倉順三と云う建築家を師とした事でしょうか。此の事は建築の総合性と、70年代からIDデザイナー達の多くが陥った商業的スタイリング競争にも巻込まれないだけの環境も考慮した強さを獲得したことです。
長さんは第12回ミラノ・トリエンナーレ展の展示計画の金賞を初めとして様々な賞を取られています。しかし是等の賞の中で最も時代を映す賞は「長大作、水之江忠臣、松村勝男ファニチャーコレクション展」に対する毎日産業デザイン準賞でしょうか。3人の親交を示すだけでなく、夫々が同じく前川国男、吉村順三を師とした同い年の水之江忠臣、二つ違いの松村勝男とデザイン思潮も共有していた事です。水之江、松村のお二人は20世紀内に亡くなられましたが、此の度の長さんのご逝去でデザインにおける一つの時代が終わった事をツクヅクと感じます。
心よりのご冥福をお祈りいたします。
ラケット構造の小椅子 1960
低座椅子 1960
大戦後3年目(1948)坂倉研入所の年、新建築誌の「15坪住宅特輯号」に掲載された作品
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