The Japan Interior Architects / Designer's Association
Monthly Report
No.261 Jul, Aug, Sept, 2013
 

フランスに9月始めから3週間滞在してきました。

今回、パリでの私のミッションは「メゾン・エ・オブジェ」視察と同時期に開催されたパリデザインウイーク参画の展覧会「JAPAN STYLE & DESIGN NOW」への出展でした。

まず今年のメゾン・エ・オブジェのテーマ展示は「光」です。

4月に開催されたミラノサローネでも隔年で開催される「照明(Euroluce)」の年でした。

どのメーカーでもエコロジーを提唱するLEDがメインで新製品の量、質ともに圧倒的な見応えがあり大盛況でした。

ヨーロッパではLED等の先端技術の光源を空間に如何に違和感なく調和させていくか、如何に美しい照明器具をデザインするかに最大の力を注がれているのに比較して、機能、コスト、安全面が最優先されている日本の基準との格差があり考えさせられる場面も多くありました。

世界中の市場を牽引する「光」はまさに2013年のトレンドと言えます。


メゾン・エ・オブジェの招待デザイナー石井幹子氏、石井リーサ明理氏の「ライト,エッセンシャルズ」は先端技術で光の切り口から7つのデザインアプローチを提案した大きなブースがありました。印象的だったのは「アートパネルテレビ」で、点灯していないテレビにキャンドルの揺らめく炎を灯した「インテリア」視点のテレビでした。これはフロントのアクリル板に特殊フィルムを施し一部では光を隠蔽、また一部では光を透過させハーフミラー効果をデザインに効果的に生かしていました。

どの提案も決して奇を衒ったものではなく建築空間に採用可能な案に焦点が絞られていました。世界中の建築空間の現場に多く携わる両氏のグローバルマーケットを見据えた視野、実践経験に基づいた自信の一端が伺えた気がいたします。

2012~2013の世界の見本市全体の傾向を振り返ってみましても、インテリアマテリアルとして、天然木材を筆頭として金属、亜麻など天然繊維、毛皮などの天然素材が特に目立ちました。

変わったところでは「2013メゾン・エ・オブジェ」で「アニマル剥製」のメーカーがダイナミックな展示ブースを出展し人々の注目を集めていました。日本人の感受性では残酷と映る「剥製」も狩猟の歴史が長いヨーロッパでは決して珍しいものではないのかもしれません。

「自然への回帰」憧憬が、2013年の ひとつのインテリアトレンド傾向でした。その流れを汲んでか一部の高感度なデザイナーたちの間で「自然と資源の豊かなアフリカ大陸」への興味が急速に広まりつつあるのを多方面で見聞いたします。「アフリカ」はこれからのトレンドのひとつのキーワードになる予感がします。

欧米のインテリ層のインテリア空間のコーディネートに必要な「定番品」として、モダンな空間にモダン家具を合わすだけでは足りない、アンティークやプリミティブなモチーフ例えば「アフリカンアートをワンポイント上手に取り入れる事」がアイディンティテーを表現する上で重要と教えられた事がありますが、確かにそれは当たっていると思います。

例えばニューヨークのメトロポリタン美術館のアフリカンアートのコーナーを見るたびに現代芸術家もデザイナーもアフリカの造形美から如何に強いインスピレーションを受けただろうかと想像せずにはいられないほど刺激的で素晴らしい感性を発見します。

プリミティブアートなど異なる要素をモダンインテリアに上手に取り入れることにより、空間により洗練された演出をもたらしてくれる効果があることを海外の人は良く知っています。

そんな理由で「メゾン・エ・オブジェ」はインテリアのデコレーションに必要なアートも多く出展されている見本市ですが特にアフリカンアートも数多く出品されています。日本人には少し馴染みの少ないような国や文化の造形美を取り入れた「リミックススタイル」のインテリアの手法やエッセンスを多く見聞きする事が出来ます。それが「メゾン・エ・オブジェ」を見に行く醍醐味のひとつなのではないかとわたしなりに分析しています。

第2のミッションは、「パリ・デザインウイーク2013」への参画が目的で一般社団法人 日本インテリアプランナー協会(JIPA)主宰で今年初めて企画,開催されました「JAPAN STYLE & DESIGN NOW」会期9月9日(月)~15日(日)です。

http://www.jipa.net/paris/

後援はSAFI(Salons Francaiset International )

「パリ・デザインウイーク」とはパリ市内約100カ所以上のショールームやギャラリーが参加する新しいデザインイベントでミラノサローネと同様に雑誌「INNTERNI」がガイドブックを編集、発行して一般公開で開催しています。シャンゼリゼ通り一帯にもイベント名を大きく掲げたフラッグが掲げられ、宣伝にもかなり力が入っていました。

私も「JAPAN STYLE & DESIGN NOW」へ16組のデザインユニットの1人として出展しました。

会場はマレ地区の中心地で非常に恵まれた環境のギャラリーで開催されました。

日本の新しいデザインとライフスタイルをプロダクト製品、照明、インスタレーションなどに示唆したバラエティに富んだ展示内容でした。

接客していて印象的だったのは、フランスの人々は期待していた以上に日本のデザインに関心が高く、熱心に時間をかけて鑑賞したあとコメントをくださる方が実に多かった点です。

私は生まれ育った京都で日常的に目にする神社のしめ縄などに垂れ下がる紙垂「切り紙」をモチーフにした照明スタンドを発表しました。

理解されるか心配だったのですが見てすぐモチーフの意味を分かってくださる方も多くいて「いいアイデアだね」と声を掛けて下さるフランス人に逆に驚かされました。日本とフランスの文化、芸術の交流の長い歴史の成果を実感しその土台を築いて来られた先人に感謝するとともに、日本人としてのアイディンティを生かす価値を再認識させられたような気がいたします。

 

「パリ・デザインウイーク」の中心的な会場として賑わっていたのはセーヌ川に隣接したデザインスクールでした。世界的に同じ傾向として「ECO」や「リサイクル」「素材の新たな活用」をテーマとした家具やプロダクトが多く、かたちをデザインするのではなくデザインアプローチや製造方法を考える学生が目立ちます。

展覧会を見に来てくれた学生から「デザイナーを仕事にするにはどうしたら良いか?」「プロダクトとインテリアとどちらにも興味があり進路に悩んでいる」などの質問を受けました。希望に満ちたキラキラとした瞳に「日本でデザインを学ぶ学生と想いは一緒だなあ」と親近感を感じたり、嬉しくなったりするシーンがありました。

 

最後に私事ですが、縁あって来年2014年1月にバスティーユにパリ市が運営する若手クリエーターのインキュベーション施設「アトリエ・ド・パリ」主催のもと、日本のクリエーターを紹介する展示会「Kawaii et cetera」を、弊社がキューレティングさせて頂く計画がすすんでいます。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~tapie/event/paris2014.html

近くには、国が運営するインダストリアルデザインセンター「Le Lieu du Design」や、有名なデザインスクール「ENSCI les ateliers」がありパリのデザイン動向もこれからますます興味深いです。

ここ数年偶然ですが、私にとって「人と人とのあたたかい交わり」の機会が増えて親しみがより一層増してきたフランスです。

出来ればこれからも微力ながら地道にこつこつとフランスと日本のデザイン交流の架け橋の一助を継続していけたらと思っています。


 
「メゾン・エ・オブジェ」「デザインウイーク」トレンドウオッチング
北・東日本エリア 玉井 恵里子
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