JID中日本エリア 学生賞 2024

Japan Interior Designers' Association - information

名古屋文化短期大学

名古屋文化短期大学
ビジネス専攻 インテリアデザインコース
中駄 藍香 さん

自由

海外研修でイタリアに行き、現地の方々のありのままの姿、開放的でポジティブな思考に魅力を感じたことがきっかけで、飾らず自然体でいたいと考えるようになりました。
私はそれまで真逆の人間でした。人の目を気にせずもう少し「自由」になってもいいかもしれない。
「自由」とは何かに着目した作品です。
皆さんにとっての「自由」とはなんですか?

評価のポイント:

今回の作品は、自分の中から湧き出るようなイメージを具象化する形で表現された造形である。様々な素材を使い、試作を繰り返し生み出した形は、彼女らしさやその思いを表現しつつ、少し殻を破った思い切りを感じさせる。強く美しい作品に仕上がった。

トライデントデザイン専門学校

トライデントデザイン専門学校
総合デザイン学科 インテリアデザインコース
野原 麻那 さん

水彩のまち

水の都と呼ばれている岐阜県大垣市の水門川の流れる北側駅前商店街周辺は、年々建物の老朽化が進んでおり、空き店舗や空き家が増えてきている。
問題解決として、周辺に住む人が増えるような広場をつくり、多くの大垣市民が集う場となるように計画した。
また、水門川を流れるたらい舟の中継地としても機能する川の駅を設置。市民が水との関りをさらに深め、歴史や特産品などの地元の魅力を再確認し、外に発信する。
この場所に集うことで、水の都に住む人々の生活が変化し、川と共存していくことができると考えた。市民が集まる交流の場として発展していくことで周辺に住む人々が増加し、閑散としていた駅前商店街周辺の住宅街が活気ある街になって欲しいと願い、提案した。

評価のポイント:

離れた二つのエリアに橋を架けることで空間の世界観が見事に表現できており、まちに溶け込むようなデザインとなっている。派手ではないが現実的であり、場所のポテンシャルを活かしたスケール感の良い提案。

トライデントデザイン専門学校 インテリアデザインコース長 田淵智子

椙山女学園大学

椙山女学園大学
生活科学部 生活環境デザイン学科
芋月 光 さん

Summer Tone -瓶が奏でるアンサンブル-

日本では四季に関する音の空間演出が多くあり、代表的な例が夏の風物詩の1つでもある風鈴である。夏の神社や寺で無数の風鈴が飾られてる事例では、透明感のあるガラスと風鈴の音によって聴覚と視覚の両面から夏を演出している。
本制作では、形状の異なる複数の空き瓶を用いて配置や配色を変化させ、音と視覚で『夏』を表現する空間演出を提案する。3種類の瓶を使用しており、それぞれの音の違いや、音の重なりを楽しむことができる。瓶の配置・配色は夏を連想させる打ち上げ花火をモチーフとしており、内側から赤、橙、黄、緑のように色の変化させるとともに中心から外側に向かって瓶を吊るす数を増やして花火の広がりを表現した。中に入ったときに幾つもの瓶が奏でる涼しげな音と真下から見上げた時の色とりどりの瓶で聴覚と視覚の両方で夏を満喫できる空間となっている。

評価のポイント:

心地よい音の組み合わせを見つけるために、瓶の形状、長さ、本数、組み合わせの比率はもちろん、瓶の内側に吊る舌(ぜつ)についても素材や形状など多くの試作・検討を行った作品である。その結果、卒業展会場では涼しげな心地の良い音が響き、商業施設関係者から実際に展示してみたいといった好意的な意見を頂けた。

椙山女学園大学 生活環境デザイン学科 山下健

名古屋造形大学

名古屋造形大学
空間作法領域
野呂 果央 さん

くつおとを鳴らして

三重県いなべ市にある丹生川小学校。
人口も少なく少子高齢化が進むこの町を子どもたちのくつおとが響く明るい町へと変えていくことを目的とし、地域における「新しい小学校のあり方」を計画しました。
既存小学校の一部機能を周辺地域の空き家や空き地に配置。
授業を受けるために児童がまちに出ることとなり、経験も授業の幅も広がってゆく。
地域の人々との交流を通して教科書では学べないことを自然に身につけ成長する「まちの小学校」を提案します。

評価のポイント:

子どもたちの成長を過疎化した町全体で見守る小学校のカタチは今後の社会での大きな方向性と考える。まちに出た教室が自由に、生活や自然と繋がる生き生きとした提案であること、また時間割の組立てから地域の教室配置まで念密な調査に基づいて完成させたことを高く評価した。

愛知淑徳大学

愛知淑徳大学
創造表現学部 創造表現学科
牧野 有紗 さん

求道

私は祈りの形姿として礼拝堂の設計を行った。日本での暮らし、国外での戦争、大規模災害など様々な悲劇に思いを寄せたとき、これらはどのようにして贖えばよいのか。この問いに平易な解答を求めることは叶わないことがわかる。ならばまずは様々な不幸な事象に向き合い、その忘却を畏れ、それらの悲劇を共有することから始められるべきである。悲劇の共有としてまさに「祈り」という行為から始まる。悲劇を悼み、癒し、心の拠り所となる「祈り」の形姿を私なりに構想することにした。祈りの場と併せて巡礼、礼拝、追悼の場が一体となった建築計画とする。最奥の礼拝空間では屹立する力が個人との対峙を迫る。皆と共有された場での祈りは個々人の祈りを超える力が宿るかもしれない。それを願って設計を行った。

評価のポイント:

実存をテーマに扱った作品。人間が〈社会的/超越的〉な両義性をもつ存在で社会に対して絶望し、超越性へと傾斜した先の空間といえる。宗教という危うさは有りながらも、それでも救いの道を求めるイメージの構想力と空間構成は秀逸である。

愛知淑徳大学 間宮晨一千

金城学院大学

金城学院大学
生活環境学部 環境デザイン学科 空間デザインコース
長谷川 真由 さん

「kasane」~人を偲ぶデザイン

鋳物を利用し、仏壇に代わる人を偲ぶ新しい形のデザインを行った。「kasane」とは人生を重ねる。物事を重ねる。ものを重ねる。命を重ねる。など様々な重ねるという意味をもつ。「鋳肌の無垢な素材感」「手に取ることで感じる重さ」「溶かすことができる」という特徴を生かし「尊」「故」「殻」の3段の組み合わせパーツを用い組み合わせを変える事で故人を思う形を選ぶことができるデザインとした。

評価のポイント:

現代社会における生活の中で、身近に人を偲ぶことのできる新しい形について研究したこの作品である。衰退する鋳造業に目を向け、繰り返し再生できる素材に着目し、ブランド企画としてロゴマーク、パッケージまでのデザインおこなった点を評価する。

担当教員:弓立順子

名古屋芸術大学

名古屋芸術大学
芸術学部 芸術学科 デザイン領域
スペースデザインコース
黒木 星冶 さん

Blind Chair

家族とテレビを共有していると、度々気まずい場面に遭遇することがある。突然セクシーなシーンが流れ始めたり、笑いのツボが違うせいで自分一人だけがニヤついていたり、涙脆さから自分だけが涙を流していたりといった場面もあった。そしてその度に私は気恥しい思いを隠すため、そっとスマホに目を移す。そんな時に思いついた、家族と同じ空間に居ながらも表情を隠してくれる椅子。

評価のポイント:

誰もが思うようなちょっとした気まずい瞬間を切り取り、小さな問題点も取り上げ応えていく上での、デザインプロセスがとても真剣に取り組まれている。1/1モデルを何度も作り直し、細部まで繊細なディテールを詰めていき、美しいプロポーションと機能美を兼ね揃えたデザインへと落とし込んでいる。

名古屋芸術大学芸術学部芸術学科デザイン領域スペースデザインコース 講師 西岡 毅

名古屋学芸大学

名古屋学芸大学
メディア造形学部 デザイン学科 スペースデザイン領域
日谷 彩花 さん

身も心も触れ合える複合型交流施設 -Flare Park-

2020年に入学した私たちの学生生活は、思い描いていた華やかで楽しいイメージとは全く違う形でスタートした。制限された日々が続いたが、その中で人と人が繋がることの大切さを改めて感じた。そこで、そんな私たちだからこそできる「学校や大学の枠を超えて若者たちがオフラインで繋がる場」をデザインしたいと考えた。繋がる楽しさを肌で感じ、誰もがふらっと立ち寄りたくなる場所になるよう、カフェや遊び場も充実させ、緑豊かな空間にした。

評価のポイント:

コロナ禍に学生生活を過ごした経験から生まれた作品。「繋がる楽しさ」をコンセプトに、それを大胆なカタチで表現した。内発的動機を自分の中だけで終わらせず、社会に向けた提案に昇華させたことを評価したい。

名古屋学芸大学 メディア造形学部 デザイン学科 スペースデザイン領域担当 准教授 山本あつし

大同大学

大同大学
情報学部 情報デザイン学科
近藤 広起 さん / 榊原 健斗 さん

身長差30cm の2人のためのダイニングチェア「EYECLE」

多くの椅子は平均的な体格に合わせて設計されているため、少数派の体格にとって不便な場合が多い。背もたれの高さや座面の幅などの不満があるが、身長差のある2 人が座った際に目線が合わないという問題もある。そこで、本研究では筆者の身長190 センチと女性の平均身長約160 センチの30センチ差向けの椅子をテーマにした。外観を統一しながらも2脚の椅子の適切な寸法を徹底的に研究しデザインを行った。結果として、目線が合うことでより親密となり、仲の良い2人を彷彿とさせるスタッキング機能も備え、輸送効率にも配慮したダイニングチェアが完成した。

評価のポイント:

「たかが目線、されど目線」を合言葉に高身長ならではの問題に着目し、段ボールや合板を用いた試作品を用いて適切な寸法や重量を徹底的に研究。 また、ペーパーコードを張った伝統的な意匠と、曲面的で新規性のあるディテールが融合する本格的な佇まいの椅子を完成させた姿勢を高く評価した。

大同大学 情報デザイン学科 准教授 舟橋慶祐

中部大学

中部大学
工学部 建築学科
前島 あこ さん

集う 営む 暮らす -柳ヶ瀬商店街再開発計画-

岐阜市の玄関口である岐阜駅北部に位置する、柳ヶ瀬商店街の中心部にある百貨店「長崎屋」跡地を敷地とした。戦後から生活の基盤として栄えた柳ヶ瀬商店街は、時代と共に商店街のシャッター化や空き家の増加、来街者の減少といった問題が発生した。約20年の間放置され柳ヶ瀬に暗い影を落としていたこの地に新たな建築を建てることが、人を呼ぶ起爆剤となり柳ヶ瀬商店街の再開発に繋がると考えた。
提案として、新たな商店街エリアとそれに付随するデッキで繋がった建築が、人の流れを介してさらに繋がりその人の流れが柳ヶ瀬商店街へと拡大する狙いがある。そして、かつてのように柳ヶ瀬商店街を散策してショッピングや食べ歩きを楽しむ場所へと再生するための拠点として、本計画の建築が機能することを期待する。

評価のポイント:

地元愛にあふれた柳ケ瀬商店街の活性化プロジェクト。面的な開発は現実的ではないことから、点による最小限の介入により最大の効果を得ようという試み。生活の様子が緻密に感じられる魅力的な模型で表現しきった。

愛知工業大学

愛知工業大学
工学部 建築学科 建築学専攻
方山 愛梨 さん

残映 -生き物と建築が残し続ける渓谷-

本提案では、人間が作り上げた環境のための導水路、堰堤などを受け入れ、残影(心霊スポット)となった生態系のない自然へと姿を変えた渓谷に、地域住民、観光客が「生活すること」の美しさや厳しさを体験する中で、新しい建築と生物の関わり方を提案する。生き物が蘇生し、本来あった生態系のある渓谷となる。それは残映(貴重な瞬間: 電車が通る景色や人々の非日常空間)となり、人々の心に残り続ける。

評価のポイント:

廃墟化した愛知県春日井市JR定光寺駅周辺の美しい景観の渓谷沿いに、小規模多機能型居宅介護施設やオフグリッドの宿泊施設などを配し、川音や虫・鳥の鳴き声を日常に取り戻す計画で、場が持つ魅力を引き上げた作品。

愛知工業大学工学部建築学科 教授 中井孝幸

名古屋工業大学

名古屋工業大学
工学部 社会工学科 建築デザイン分野
服部 廉 さん

AIR TRANSPORT HUB

2030年代、名古屋にリニア中央新幹線が開通し、エアモビリティのオンデマンド運行が普及する時代を想定した交通拠点と可変式マーケットの複合建築を提案する。移動販売をおこなうエアモビリティが集積し、店のレイアウトや種類が柔軟に変化する可変式マーケットとなる。また、従来の高層建築とは異なり、地上付近に限らない様々なフロアでエアモビリティによる人の出入りがおこり、建築全体が街との接点を持つ。新たな交通拠点と可変式マーケットが複合することで、観光客・出店者・地域住民それぞれにとっての体験価値を提供する名古屋の新たなランドマークとなる。

2024.06.21

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