「JIDAWARD 2017」は「偶然と必然」をテーマに、2017年1月~3月の間、公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした136点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づいて第1次第2次の審査を行い、現地審査や現物審査を行う第3次審査を経てゲスト審査委員の参加を得た最終審査で、大賞1点、インテリアスペース部門賞3点・入選5点、インテリアプロダクト部門賞3点、NEXTAGE部門賞10点の作品を選出した。
全体講評
ゲスト審査員 五十嵐 久枝
(IGARASHI DESIGN STUDIO代表、武蔵野美術大学教授)
最終審査スペース部門審査では、多岐に渡るジャンルの作品が対象となリ大変興味深い審査となった。多様なスペースヘの考えや意識が深まり、その表現も拡張されてきていると感じる。規模も価値観も多様であり、それぞれが輝きをはなっている中で、選ばれた2017年の大賞作品は、その場に関わる人と支える人の繋がりが内外全体に包含されていることを感じさせる力作であった。インテリアプロダクト部門では、プロトタイプと模型での提案を比較し審査する難しさがあったが、小さな生活雑貨から空間サイズまで幅広い提案がされどれも熱意が伝わる作品であった。NEXTAGE部門では、製品化に向けて完成に近づいてきている作品と提案型デザインが混合しユニークだがこちらも審査は難しい。感覚を刺激するものや機能性が加えられた作品もあり興味をもった。今後の、この賞における発展と各々作品の良い展開に期待している。
ゲスト審査員 石橋 勝利
(デザイン誌「AXIS」統括)
最終審査に残ったどの作品も、つくった人々の意図に溢れた素晴らしい空間だったと思います。だから審査は難しい。そこで、「偶然と必然」という今回のテーマの下、敢えて自分なりの審査基準を持つとすれば、当初のデザイナーの意図を超えて、使い手の無意識の行動が、これまた知らぬまに誘発され、新たな使い方や心地よさが生まれていくかどうか、でした。現在の作品の状況を見て審査をするものの、大切なのはこれからをイメージできるかどうかだと考えたのです。つまリ、われわれの想像力を掻き立ててくれる空間。今回は、そのような作品が高い評価を得たと思います。
大賞 Grand Prix
社会福祉法人楓葉の会 椛 ーMOMIJlー
一之瀬暁洋(株式会社イチデザイン)
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![](https://i0.wp.com/jid.or.jp/s/wp-content/uploads/2021/12/GP-2.jpg?resize=1200%2C856&ssl=1)
[審査講評]
知的障がいや発達障がいを持つ利用者に、生活介護、就労継続支援を行う多機能型事務所であり、併設された木工作業所等で作業を行う利用者が作業以外の時間をすこす生活空間となっている。スキップフロアの印象が強いためバリアフリー的観点からの質問をしたところ、大事なことは利用者が心から楽しめる過ごしやすい空間であるかどうかと考えますというのが施設長の答え。実際、自分なリの居場所を大事にする利用者たちの寛いだ様子や、子どもたちとの交流を楽しむ姿を見ていると、この施設のめざしている「地域社会と福祉とを結ぶ空間」としての役割が、デザインによって具現化されているのだな、と感動させられた。(清水忠男)
インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize
熊野町の離れ「廻り土間」と「斜めの抜け」
荒木 源希、佐々木 高之、佐々木 珠穂
(A +Sa 株式会社アラキ+ササキアーキテクツ)
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[審査講評]
母屋の南庭に建つ離れで、祖母の将来車椅子使用に対応した計画である。現在は孫子、盆苔れの集いと宿泊が可能で、設計家の家族・親族への気配りが実現され、成功している。建物内を「通リ土間」で、宿泊部と集いの場・個室を隔てる・繋ぐ手法も明快である。視線計画・通気計画で窓の配置を「斜め抜け」とした手法は新鮮である。建具もオリジナルでデイテールはしっかりしている。素材構成は、漆喰、玄昌石、ナラ、和紙など和材に限定、こだわリが感じられ、まとまリも良い。通リ土間、集いの場の合掌天井は良く工夫され、空間量も良い。総じて、良く凝縮され心地良い建築・インテリアと評価した。(小宮容ー)
インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize
ÔYANE
原田圭(株式会社ドド)
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[審査講評]
400年に渡り日常食器を作り続けてきた波佐見にふさわしい施設となっておリ、大きな白い屋根は地域の新たなランドスケープとなっている。陶磁器を焼く際に使うサヤ(厘鉢)で構成された室内は、展示販売、ギャラリースペースとなっておリ、廃棄処分されるサヤを存分に生かしている。必要以上のことがされてないにも関わらず、サヤの使い方、納まリ、空間の使用目的と、間の取り方が自然で、結果居心地が良い。下階にあるストーブの煙突を半露出で暖房効果に寄与させるなど、細かい配慮が随所にみられる。さらには外部のサイン箱文字、店内ペンダントライトのシェードもオリジナルデザインのセラミック製と、細部まで念を入れている。(米谷ひろし)
インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize
垂木の住宅
富永 大毅、藤間 弥恵
(富永大毅建築都市計画事務所)
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[審査講評]
「何のために木をつかうのかが見えなくなってきている」作者のコンセプト通りに、本作品は山林の維持や今後の林業の活性化を基本から考え直した提案である。単に大量の木材を用いたり、表面を木質で覆うという手法ではなく、先ず流通から見直し垂木用に加工された杉材を一括購入し、その上で現場作業を短縮し簡略化した現場工法の開発、さらに木材の特性を考慮しデザインに反映している。天井との関わリやその他壁面等とのバランスも工夫され斬新で居心地の良い空間を具現化している。またセンターにコの字に配置された間仕切りや収納家具は回遊性が確保され床面積からすれば従来得られなかった拡がリも確保しておリ興味深く存在感のある作品である。(近藤康夫)
インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize
紙庵
片桐 和也(KatagiriArchitecture+Design)
犬塚 敬聡(Akinorilnuzuka Design)
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[審査講評]
雪の「かまくら」を思わせる和紙の白と折り紙の手法で構成された空間は非常に美しい。日本人らしい繊細さと大らかさが感じられる。審査は模型で行われたが、実際に空間を体験したいという気持ちを掻き立てる紙庵である。接着剤を一切使わず和紙のみの組み合わせで形態も組み合わせによって自由に創造出来るという点に興味は広がる。また、この美しい移動可能な茶室空間はヨーロッバの建築の中でも「和のこころ」として容易に受け入れられる可能性を含んだプロダクトデザインだと思う。今後が楽しみな発展可能なデザインと言える。(川上玲子)
インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize
Trus(s)tool Wall
片桐 和也(KatagiriArchitecture+Design)
犬塚 敬聡(NadaArchitecture+Design)
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[審査講評]
今回のプロダクト部門の中では、インフォメーションスペースの陳列家具の提案という事で多少建築的であるが、各ユニットの組み合わせもバリエーションに楽しさがあリ、構造的にもピンでうまく接合されてあリ、単ーで不安定な事なく、良くまとまっている。素材的にも四万十のねばりのあるヒノキ材を使用してあリ耐久性もいいと思う。そのヒノキ材のパーツが太平洋の水面の輝きとコラボレーションし光と影となリ、壁面にオーバーレイするときは、楽しみの一つであろう。(岩倉榮利)
インテリアプロダクト部門賞 Interior Product Prize
うまテーブル
中西 竜太(カクヨン)
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[審査講評]
作品タイトル通リ目的に合わせて設計されたテーブルであるが、多様な用途に対応すべくエ夫がされている。畳の上に置く家具として天板の高さが615mmとかなり低めの設定であリ、狭い空間に合わせ緩やかにラウンドさせた天板は2000X800mm、サービステーブルとしても使うことが可能な部材を連結すると2400mmまで延長することができる「うま」をモチーフにシンプルな形状で多彩な用途に対応している。和室の暮らしに合った「しつらえ」という言葉がしつくりくるデザインの家具である。(木辺智子)
NEXTAGE部門賞
[審査講評]
入選今回のネクストエイジ部門の最終審査対象は、全てがプロダクト的作品で、スペースの作品はなかったが、際立つ発想やユニークな作品、ディテールをしつかりおさえた作品、これからの可能性に挑戦した作品など、どれもが力作で優劣つけがた<審査が難航した。最近はあまり耳にしない言葉であるが1970年代の新造語『環具』とも言える作品や、システム家具の提案作品など、印象的であった。次の時代を担うデザイナー達の今後の活躍が大いに期待される。(池田和修)
NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Prize
五十嵐久枝賞
On y Va!
代田 哲也、三澤 直也、辻 証子、榊 竜太
(株式会社フィールドフォー・デザインオフィス)
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NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Prize
石橋勝利賞
KIRI
山下 麻子、山中 コ~ジ、山中 悠嗣
(pivoto)
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NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Prize
folding ベルトの張力とヒモ丁番を利用した折リたたみベンチ
清水 佑哉、大坪 ユキノ(株式会社スーパースーパー)
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泡沫の境界 遷移による空間芸術の研究
田中 秀行(九州産業大学芸術学部デザイン学科空間デザインコース)
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Step up Chair
藤村 益生(藤村デザインスタジオ)
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Quite
柳川 大知
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生活に調和する減災家具
中山 泰徳
(林テレンプ株式会社デザイン部インテリアデザイン)
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静のテーブル、動のテーブル
今井 大輔(有限会社フリーハンドイマイ)
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KESHIKI
藤原 瞳太、岩澤 太郎 (DESIGNMUDAI)
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木と革
小林 寛明、小林 大士(家具と革と小林)
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インテリアスペース部門入選 Interior Space
いとの森の歯科室
有吉 弘輔(ノットイコールー級建築士事務所)
有吉 祐人(スプモーニデザインスタジオ)
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女神の森セントラルガーデン
永山 祐子、山岸 大助、鈴木 俊祐
(有限会社永山祐子建築設計)
大石 卓人、伊藤 周平
(株式会社竹中工務店)
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sitatte sapporo札幌フコク生命越山ビル
糀谷 正和、西村 健
(清水建設株式会社ー級建築士事務所)
志村 美治、井筒 英理子
(株式会社フィールドフォー・デザインオフィス)
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エルメス祇園店
鬼木 孝一郎(株式会社鬼木デザインスタジオ)
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ニフコYRP防爆棟・実験棟
越野 達也、高橋 一哉(株式会社竹中工務店)
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2017.11.21