The Japan Interior Architects / Designer's Association
Monthly Report
No.265 Jul, Aug, Sept, 2014
 

間違いなく、近い将来、いや5年先には製作工程が全くかわる、デザイン界も変化するだろう・・・と実感する話題の3Dプリンターの展示会が開催された。


3Dプリンターによるデザインスツール

(引用:cubifyのHP)

 
       


先日国際展示場で開催された、確か「フードシステムソリューション、軽量化・高度化技術、プラスチック高機能化技術等様々な技術が渾然一体の展示会」。

中でもメディアで大きく取り上げあげられる『3Dプリンター』の最新情報を得ようと、同会場向かった。

展示会主催者には申し訳ないが、あまりに多くの技術展表記があったので、どれが3D関連の展示会なのか?・・・記憶にない。


3Dプリンターによるイベント風景

 

会場に入るとちょうどセミナー「SD PRINTEING TOKYO」が始まろうとしているところだった。

慌てて椅子に滑り込むと同時にセミナーが始まった。


3Dシステムズ・ジャパンの小林氏

 

「3Dプリンターの現状と今後について」の内容だ。

主催:(株)スリーディー・システムズ・ジャパンの小林氏が、話始めた。


とにかく製造業の現場を変えているのが、3Dプリンティング技術。

約30年程前に発明された特許期限が2009年に切れ、近年3Dプリンティングメーカーが続々と登場し、一気にホームユースの低価格3Dプリンターが普及した。


makerbotの3Dプリンター

 

それまでの3Dプリンターは数百万円もした為、一般人が入手することはほぼ不可能だったが、特許が切れた今では数万円の3Dプリンターも数多く登場し、多くの個人ユーザーがモノづくりする状態になっている。そして2014年2月に、より精度の高い先進的な造形方式である「レーザー焼石法」の特許が期限切れ。この特許切れにより3Dプリンター市場はより大きく成長する。


この経緯は、パソコンのそれと同じだ。


Stratasysの展示会風景

 

今回のセミナー主催社:3Dシステムズはいまや、米ストラタシス社に次ぐ3Dプリンターの世界の2大大手、上位3社で業界シェアの80%以上を占めている。


□様々な分野で実現する3Dプリンティング

セミナーでは、3D Systems 社CEO 、Avi Reichental氏の基調講演の映像を投影し「3Dプリンティングの現状と今後」と話は進んだ。


CEO:Avi Reichentalの画像(引用:cubifyのHP)

 

要約すると、広域にそれもスピディーに浸透している3Dプリンティング、特にアメリカが進んでいる。


3Dプリンティングは、製造業を中心に工業製品、医療、ケア、建築、教育、先端研究など幅広い分野で普及している。


医療・ヘルスケア分野ではコンピュータ断層撮影いわゆるCTスキャンなどのデータを元にした「術前検討用モデル」、身障者用のプロダクト。

歯科技術も進み、インプラント分野では特に進んでいる。


子供用ケアデザイン

 

製造分野では、製品や部品などの「デザイン検討」「機能検証」などの試作やモックアップ、とくに車は群を抜いている。


3Dプリンターによるレースカーデザイン(引用:cubifyのHP)

 

ファッション・ジュエリー分野でも興味深いデザインプロダクトが進んでいる。3Dプリンターならではの形状や構造が興味深い。


3Dプリンターによるデザインジュエリー(引用:cubifyのHP)

 

建築やインテリア・プロダクトデザイン分野では、建物の模型や試作製作の現場に使用されている。

家具や照明プロダクトでは、既に製品化されているものもある。


3Dプリンターによるデザインテーブル(引用:cubifyのHP)

 

また、人そのものをスキャンして、その人のフィギュアを作る、3DME(立体の私)は、すでに商品化されている。


3Dプリンターによるフィギュアデザイン3DMEの画像(引用:cubifyのHP)

 

3DME、つまり自分のフィギュアだ。会場でデモンストレーションが行われていた。


会場でのフィギュアデザイン3DME

 

この大きな装置の中央に人が立ち、高解像度の最新3Dスキャナを搭載した装置が360回転しながら人間をスキャンする。スキャンデータを高速処理し、高密度な3Dフィギュアを自動生成する。スキャニング12秒、3Dモデル自動生成3-5分。


フィギュアデザイン3DMEの会場風景

 

もっと驚くことは、

「食品」も作ることができるという・・・事例では「チョコレート」だった・・・えっ、食品も!


3Dプリンターによるチョコデザイン(引用:cubifyのHP)

 

実用にはカートリッジ部分の衛生面など解決しなければならない問題があるが、要は食品まで可能、ということ。


□「削り取る」から「積み重ねる」へ、

            それはクラフトマンシップが、民主化すること

従来の製造は「削り取る」方式、3Dプリンティングは積み重ねる方式。

3Dプリンターは物を作る方法の一つとして、従来からある金型を作っての成形や切削による造形を比較されることが多い。


makerbotの3Dプリンターの操作

 

一番の違いは、コスト及び時間の面で、少数(一つ一つが異なる形状のもの)を作る時に効率がいい。

そして環境の面では、ゴミを出さない。(従来の切削では削りかすがゴミとなっている)

合わせて、エネルギー削減ができる。


つまり、地球にやさしい技術なのだ。


3Dプリンターでデザインしたギア

 

加えて、「誰でもモノを作ることができる」のが、3Dプリンター。現在とても安価な平面プリンター(写真や葉書などプリントするプリンター)の操作を考えれば、3Dプリンターも同様になると、納得できるはずだ。


Avi Reichental氏が語っている・・・「クラフトマンシップが民主化する」と。

子供の現状にも驚く。


 

子供が3Dプリンターでデザインする(引用:cubifyのHP)

 

小学生がパッドに描いたモノが実物大のモノとして実像化される。

これは、画期的なことである。

ロンドン(マーケットプレス)では、子供がデザインしたプロダクトが製品化されている。

みなさんもよくご存知だろうが、人形、クルマやおもちゃ、ゲーム・・・子供の発想は、大人のそれより秀でている。


今や3Dプリンターは精細度が良いだけでなく、ゴム系の材料が使えたり、複数の物性の異なる材料を混ぜながら造形が出来たり、カラーの造形が出来る3Dプリンターも開発され、用途の幅も広がりつつある。

また、鉄(金属)を素材とするプリンティング技術も開発されているという。


「教育」、そして「デザイン」が重要になる

3Dプリンターは、メリットだけではない。


銃の部品の図面をダウンロードし、3Dプリンターにより部品を作成することで、殺傷能力のある銃が製作可能。2014年5月8日に3Dプリンターで作成した銃を所持していた大学職員の男が銃刀法違反で逮捕されるという事件(日本)は、記憶に新しい。


いつの時代もそうだが、新技術は使い方次第で善にでも悪にでも成り得る。

急激な技術の変化に、我々人間はついていけるか?・・・が、問題となる。


その問題を解く鍵は、『教育』。


既にハードは進んでいる。もちろん、バイオプリンティング(無害プリンティング?)など新技術の創造や「環境」、市場の「プラットフォーム」など今後のまだまだ問題はあるが、中でも「教育」が重要になってくる。


3Dプリンターソフトと子供(引用:cubifyのHP)

 

米国、Singularity university (シンギュラリティ大学/グーグルや同社のラリー・ペイジCEOの支援を受けて創設された教育機関。カリフォルニア州シリコンバレー にある米航空宇宙局(NASA)のAmes Research Center内にキャンパスを開設。)では、子供たちの教育プログラムを開発している。


直感的に物事を理解する子供のcreativity(クリエイティビリテー/創造性+アイデア)を育むことが既に海外では進められている。


子供と3Dプリンター(引用:cubifyのHP)

 

日本は、大丈夫か?・・・と、いたたまれなくなる程、3Dプリンティングマーケットの広がりと早さを痛感する。


しかし、同時に3Dプリンティングは近い将来、あらゆる素材を使えるようになる。そして様々な分野で生産効率をあげ、時代に則した生産製作工程と進化すると考えられる。


と同時に、3Dでは生産できない素材も貴重なモノとなっていく。例えば、木材や革等の自然素材。20世紀の産業革命後新素材オンパレードでも消滅しなかったそれら自然素材も今後のデザインに益々影響を及ぼすであろう。


誰でもモノを製作・生産出来る時代が、間違いなくやってくる。そして、益々「デザイン」の価値が重要になってくる。


もちろん、我々デザイナーの立ち位置も真価が問われる時代となるのである。


■取材協力 株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン

*Cubify.comは、3DSystems社のコンシューマ向けトータルサイト

 
製造革命を起こす 3Dプリンターとデザイン
北・東日本エリア 石川 尚
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