The Japan Interior Architects / Designer's Association
Monthly Report
No.265 Jul, Aug, Sept, 2014
 

ウィーンの街で開設150周年、記念の特別展始まる。

オーストリアの首都、ウィーン歴史地区のど真ん中にあるオーストリア応用美術博物館:Osterreichisches Museum fur angewandte Kunst in Wien・・・通称「MAK」。


ボクがウィーンに行く目的のひとつにこのMAKがある。


MAKは、中世から現代に至るデザインミュージアム。

建築、家具、ガラス製品、陶磁器、銀細工、テキスタイルなど、様々なジャンルのデザイン作品が展示されている。


特に世紀末芸術のメッカと言われるウィーン工房の工芸品、トーネットの曲げ木家具・椅子、ユーゲントシュティール様式の名作品のコレクションは、圧巻だ。


また、ストックレー邸(ブリュッセル)壁面装飾画のためグスタフ・クリムトが金箔を用いて描いた下絵、グラスゴーの家具・建築デザインで一世風靡したチャールズ・レニー・マッキントッシュの壁画・家具など、貴重な展示品がいつでも観賞できるミュージアムなのだ。



さて、今年のMAKでは開設150周年を記念して、3つの特別展が開催されている。

ちょうど開設150周年を祝して記念レセプションの招待状頂いたので早速MAKへ向かった。


□MAKコレクション「ウィーン1900」は、近代デザインの立体年表

1Fロビーでは盛況なパーティーが開催されている。パーティーを尻目にあらためて館内の展示を観賞する。


まず、2012年秋にオープンしたMAKコレクション「ウィーン1900」。

以前はウィーン工房展示スペースだった2階の北側。

ここでは、1890年から1938年のウィーンにおける美術工芸品を展示している。


3つに分割された展示コーナーでは、「モダンスタイルの模索」、「ウィーン独自のスタイル確立」、「ウィーンスタイルと諸外国のスタイルとの対峙」を経て、オーストリアにおける美術工芸品の発展が紹介されている・・・まさに近代デザインの立体年表だ。


ウィーン工房やウィーンデザインに影響を与えたグラスゴーの建築・家具デザイナー:チャールズ・レニー・マッキントッシュ。


市中至る所に現存する建築家:ジョーゼフ・ホフマンやオットー・ワーグナーがデザインした当時の椅子やテーブルなどの作品は何度見ても見足りない。


またウィーンスタイルと諸外国のスタイルとの対峙では、オランダの家具デザイナー:リート・フェルトのレッドアンドブルーチェアー。


バウハウスのマルセル・ブロイアーのワシリー・チェアの製作初期のオリジナルに釘付け。他にもインテリアの必需品として絨毯・敷物なども多く、テキスタイルデザインのコレクションが豊富なこともMAKの特徴である。


□今日とこれからのデザイン「MAKデザイン・ラボ」

さて、2014年春からは、地下の2000平方メートルほどのフロアが、新たな「MAKデザイン・ラボ」となっている。


ここでは、美術と日常生活の結びつきを様々なデザインジャンルで取り上げ今日とこれからのデザインについて展示している。


「SITZEN(ドイツ語) / SITTING(英語)/ 座る」コーナーでは、椅子好きのボクには、たまらない。椅子のコレクションと言えばスイスのヴィトラミュージアムが筆頭に挙げられるが、MAKのそれも負けず劣らず豊富なコレクションである。ここには、喜多さんの名作「ウィンクチェア」も所蔵されている。


中央の展示コアではヨーゼフ・ホフマンの特別展示室があり、建築から家具、食器、ジュリーにいたる名作が広々とした空間で際立っていた。


□カフェ文化の街ウィーンで生まれたカフェの椅子

再度一階に戻るとロビー右手の展示室では、今日に至るまでウィーンのカフェで用いられるトーネットの曲げ木椅子の数々を展示してある。

ウィーンで誕生したトーネットは、世界のカフェで定番の椅子を世に送り出し椅子家具メーカーである。#14と言えば、世界中で今なお愛用される定番中の定番、カフェチェアだ。


ここの展示方法が、たまらない。

全ての椅子のシルエットを中央のスクリーンに投影し、スクリーン越しにトーネットの椅子を観賞する・・・なんてエレガントなディプレイなのか。

トーネットのもつ優雅な線と繊細なパターンを平面に置き換える、まるで大きな走馬灯のようだ。


ボクがこの美術館を最初に訪れた18年前、このスクリーンによる展示方法が強烈な印象として残っていた。

が、暫くしてこのコーナーがなくなっていたので今回、以前の展示に再会出来たことはとても感激だった。


また記念すべき年の貴重イベントとして「モダンへの道:ヨーゼフ・ホフマンとアドルフ・ロース、その影響」が、2014年12月からスタート予定。



ウィーンにおけるモダニズムの2人の先駆者のウィーン建築・デザインの新時代を紹介するのだ。

MAKは所蔵しているウィーン工房(ホフマンが設立者のひとり)の全資料に加え、ホフマンの家具コレクション、アドルフ・ロースの建築模型など代表作を特別展で紹介するとのこと。


2年前のクリムト生誕150周年につづき、ウィーンのアートシーンが今年も続いている。



■MAK開館150年記念イベント

展覧会:前方志向:美術工芸からデザインへ

2014年 6月11日~10月5日

モダンへの道:ヨーゼフ・ホフマンとアドルフ・ロース、その影響

2014年 12月10日~2015年4月19日


■オーストリア応用美術館

オフィシャルホームページ

MAK - Aktuell http://www.mak.at/aktuell

 
【オーストリア応用美術館】開設150年を観る
北・東日本エリア 石川 尚
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