JIDnews 277

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

interior TREND

ポルトガルのモダニズム建築を訪れて

西日本エリア長 安藤眞代

 毎年訪れる9月のロンドンデザインウィークの前に、前々から興味のあったポルトガルに訪れました。日本にとてもゆかりのある国であること、そして世界的建築家アルヴァロ・シザの建築を実際に見たかったと云うのが理由です。


 ポルトガルのスタートはリスボン空港に近い、1998年に開催されたリスボン万博に合わせて開業した駅「オリエンテ駅」とその周辺の開発地区モダン建築。
この駅はリスボンにおける鉄道の新しい玄関口としてつくられたので、リスボンに乗入れる全ての特急列車が停車し、市内中心部や空港へ向かう地下鉄も接続するほかバスターミナルも併設しており、オリエンテ駅はリスボンの一大交通ターミナルを形成しています。
駅と巨大ショッピングモールは、動物の骨格をモデルにした建築構造で有名なサンティアゴ・カラトラヴァの設計です。
得意とする構造の美しさと繊細なデザインが融合したホーム上屋と、対照的に建物中の空間は力強いコンクリートがむき出しのモダン空間が広がります。


 そこから徒歩ですぐの「リスボン万博・ポルトガル館」は、シザの建築です。
たわんでいるように見える80mの大スパンの屋根は、PC(プレキャスト)鋼線を入れて緊張したプレストレストコンクリート床板で出来ていて、両サイドの大きな建物によって支えられています。16年を経過してもなお美しく古さを感じさせない状態で、構造デザインの力量を感じます。


 細長く縦に長い国を北上し、ポルトという世界遺産の街に移動しました。
ここはシザの出身地でシザの設計による魅力的なモダニズム建築が多くあります。
電車と徒歩で、郊外のシザが生まれ育った有名なレサ・デ・パルメイラの市営のスイミングプール(1966)を見に行きました。大自然と隣り合わせのプールは、ほぼ50年経っているとは思えないほど斬新なデザインです。
今でこそ、海の高さと同じ目線で作られたリゾート施設プールではありますが、この頃はどんなに皆んなが驚いたことかと・・・つい想像してしまいます。
当時、市からの要請で予算を抑える為に岩を使って地形に組み込ませたとのことですが、時間が経過したことで、コンクリートと岩が完璧に一体化して凄く自然です。週末ということで家族連れも少し居たのですが、海辺の風は強く、大西洋からの波がプールにぶち当たる様子はとても迫力がありました。


 ここからは移動手段が少ないため、今流行りのUber(配車サービス)を利用して「ポルト近代美術館」へ向いました。控えめな白い壁に包まれた非常にシンプルな建築です。美術館の建物が支配的な要素となることを嫌い、インパクトのある大きなファサードはあえて設けず、公園の一角に静かに納まるそんな建物をつくることを狙ったシザらしい建築です。建物の中はトップライトからの自然光が心地よい吹き抜けのエントランスを演出しています。


 その後シザが卒業し今も教壇を取るポルト大学建築学部に移動しました。個々の建物は、白いコンクリートなので無機質な感じがしますが床や階段などにポルトガルではよく見られる花崗岩が多く使われており、天然石特有の柔らかさで白と調和しています。校舎の中には部外者なので入れませんでしたが、少ない外壁の開口部に対して内部にはトップライトから光が入り、柔らかな空間を演出しているとのことです。地上から見るとそれぞれの棟が独立して建っているように見えますが、全て地下で繋がっているということです。


 シザの建築は写真では分かりづらいのですが、その空間の中を歩いていると、地域伝統や風土に根付いた独特な感性設計されていて、どの建築にもシザらしい詩的な美しさが感じられました。


 最後のモダニズ建築訪問箇所は、国際指名コンペを勝ち得たレム・コールハースの設計「カサ・ダ・ムジカ」で、完成当初(2005年)から多くのメディアに取り上げられた有名な建築です。街の中に巨大なコンクリートの巨大な多面体は、遠くからでもとても存在感がありました。でもなぜか周りのポルトガルの建物風景と一体化していて、違和感が感じられないのは不思議でした。


 今回ポルトガルを訪れて、様々な建築空間の中に身を置いて見ると、ポルトガルの自然な形、形状、風土を活かしたモダニズム建築が多いことに気がつかされ、今後のモダニズム建築の新しい姿を見たような気がしました。