JIDnews 283

JIDnews は、公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会が発行する機関誌です。

第4回ワールドインテリアウィーク2019のご報告
5月24日(金)- 5月30日(木)

イベント総参加者数は、16,970人 (10都市21会場)

共催事業
WIW担当 副理事長 井出昭子


ワールドインテリアウィーク(略称:WIW)はIFI(国際インテリアアーキテクト/デザイナー団体連合)が全世界共通のテーマでインテリアデザインの果たす役割について考える日として、毎年5月の最終土曜日に設定している「WORLD INTERIORS DAY」にちなんで、全国規模で展開するウィーク・イベントです。公益財団法人日本デザイン振興会とJIDの共催事業で、第4回目となりました。
2019年の会期は5月24日(土)〜5月30日(土)、IFI参加各国との世界共通テーマは
『Designing Spaces, Changing Lives』- 暮らしを変えるデザイン-でした。

WIWイベントは、東京ミッドタウン・デザインハブを拠点に全国各地10都市(東京、新発田、山形、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡、沖縄)21会場に於いて開催されました。イベント総参加者数は、6月14日スピンオフイベント飛騨高山ファクトリー見学会も含め16,970人の実績となりました。
新発田市で高橋JID会員、山形は信夫JID会員、仙台および登米町の登米森林組合は、毎年主催され地域ネットワークイベントを盛りあげてくださり大変に嬉しいことです。
経済産業省、旭川市、神戸市、名古屋市、イタリア大使館、スペイン大使館経済商務部、フィンランド大使館、フィンランドセンター、デザイン16団体より後援を賜り、また19企業にご賛同を頂き、WIW2019が実施できましたことに心より感謝を申し上げます。


主催者企画イベント1

4都市巡回デザインセミナー
「フィンランドの巨匠 Kaj Franck カイ・フランクの魅力を語る
   ー フィンランドより、タウノ・タルナ氏をお迎えして ー 」

5/25:東京ミッドタウン・インターナショナル・
        デザイン・リエゾンセンター
5/27:名古屋学芸大学 日進キャンパス
5/28:九州産業大学
5/31:大阪芸術大学

フィンランドより、Kaj Franck カイ・フランクに師事、カイ・フランク作品の屈指のコレクターでデザイナーでもあるタウノ・タウナ氏を日本にお招きしデザインセミナーを開催した。

Kaj Frank カイ・フランク(1911年 - 1989年) と日本
■1956年9月4日初来日したカイ・フランクは、民藝運動家の柳宗悦、河井寛次郎、浜田庄司らを訪ね約6週間、国内各地を視察した。日本の古い伝統文化、生活の中に残る習慣、漁村・農民風景、名もなき日常道具に感銘し影響を受け帰国をした。今では、ティーマ、カルティオはカイによるデザインと当然の事ながら認知されているが、実はカイの作品には、カイの名前は印されていない。このことからも、日々暮らしで使う名も無き日常品、無名性を是とする日本の民藝思想と北欧モダニズムのカイのデザイン思想が一致する。シンプルで美しいデザインを好む、フィンランドと日本の共通した美意識は現代にも繋がる。

■1958年に日本政府のデザイン指導機関・産業工芸試験所が、フィンランドのアラビア製陶所で当時チーフ・デザイナーを務めてい たカイ・フランクを招聘をした、カイの再来日となる。レクチャーでは装飾ではなく機能性重視を目指すフィンランド・デザインの理想を語ったそうだ。産業工芸試験所は、JIDの創始者と深く関係することはご承知の通り。当然来日の折に剣持勇氏はじめとするデザイナーもカイと親交があったはず。1950年代は日本のデザイン創世記とされているが、剣持勇氏は北欧モダニズムにも精通し、ジャパニーズモダンを論考したことも知られている。カイの思想も日本の産業デザインの発展に影響したはずだ。その後、日本の産業デザインは試行錯誤しながら高度成長期時代に完熟させ、現在のジャパンデザインに継承されている。

2つのエピソード
■カイはいつもポケットに日本円コインを大切に忍ばせていた。ある日ポケットからコインが落ち、タルナ氏がそれの事を知らせた際には、急に不機嫌になり慌てて拾いポケットにしまい込んだそうだ。日本の思い出が詰まったお守りコインたっだのだろうか。またカイの自邸、寝室の壁には錦絵が飾ってあり、リビングには日本地図と茶器、キッチンには籠が置いてあった。カイが常に日本を想い、こよなく愛していた事が伺える。
■1989年、カイの亡くなるこの年、最後の展覧会をヘルシンキ美術デザイン大学ギャラリーで開催した。
『ルニング賞での日本旅行 1956 - アジアにおけるひとりの異邦人』と題した展覧会では、持ち帰った鉄瓶や仮面など、日用品が展示された。中でも蛸壺はシンボルとして展示され、フジツボが真っ白にこびりついた高さ20cmの古びた蛸壺だ。タルナ氏の話によるとカイは、持って帰る際に割れないように両脚にはさんだ、とても臭かったそうだ。この蛸壺は、無名の職人が作った長く使われた日用品である。カイが日本から影響受けた思想に繋がると聴いた。

講師 Tauno Tarna タウノ・タルナ氏(1944年生まれ)
■タルナ氏は、幾度も来日している、日本にも多くの友人を持ち温泉愛好者であり親日家である。
昨年8月にタルナ氏自邸を訪問した八十氏(JID会員)より紹介を受け、WIW特別講演企画の依頼をした所、快諾を得られた。以降1月より双方で幾度もメールを交わし準備を重ねてきた。
来日初日5月23日にはとてもフレンドリーな笑顔で接してくれて挨拶を交わすことが出来た。
帰国までの10日間、4都市巡回講義の合間には美術館、ご当地日本食、温泉などを楽しんで頂いた。
「日本では素晴らしく忘れられない時間でした、全ての皆様に感謝します、それは大成功でした!全てのプログラムの詳細は高いスキムで計画されていた」と帰国後に感謝のメールが入り、それは光栄な事で嬉しい限りだ。今年9月に神奈川県立美術館・葉山でカイ・フランク展が開催される、タルナ氏コレクションが約100点展示予定だ。再会を楽しみにしている。

■カイの教え子であるタルナ氏は、カイ・フランク作品を3,000点を所有する屈指の蒐集家でありプロダクトデザイナー。フィンランドデザイン協会オルナモ元理事長、フィンランドデザイン界に関連する多くの組織の要職を歴任している重鎮でもある。
サルビス社で世界中で爆発的に売れたプラスチック食器をデザインし1986年にフィンランド政府デザイン賞を受賞。ご褒美に当時も高価だったカイ作品を1つ購入した、これがコレクションのきっかけとなったそうだ。それを知ったカイは、アートガラス作品が出来るたびに1つづつ持ってくるようになり、タルナ氏が庭先で写真を撮った。それは今、貴重なアーカイブ資料となっている。その美しい作品画像と共に、コンセプト、製作工程も含め丁寧にレクチャーを頂き東京講義では90分ほど熱く語った。カイを尊敬し家族同様に愛していた事がとても伝わってきた。

■タルナ氏は、南部鉄器のデザインを手掛け2011年にグッドデザイン賞に輝いた。カイが来日の折に一番感銘を受けたのは「南部鉄器」と言ったそうだ、カイも関わりたかったであろうデザインを自分が受け継いだ形となった事をとても嬉しそうに話した。
今回、お願いをしてフィンランドからカイのヴィンテージ作品を11点持参してもらい各講義会場内に展示をした。特にカイを知らない世代の学生への講義はタルナ氏の希望でもあった。大勢の学生が聴講し、写真を撮り、初めて手に触れて観る機会となった。多いに役立つ良いアイディアだったと後に私に感想を述べた。5会場でのデザイントークや座談会では、フィンランド文化、暮らしについても語った。

おわりに
日本フィンランド外交関係樹立100周年の今年に、このような素晴らしいフィンランドデザインの紹介ができた。WIW企画イベントにご協力いただいたフィンランドセンター様、巡回セミナーにあたり、大学教育機関をはじめ先生方、(株)フレーズクレーズによる通訳、JIDエリア関係各位の入念な準備が有りできた事、皆様の連携とご協力に感謝を述べたい、大変にお世話になりました。

『デザインとはデザイナーが名を残すためにあるのではなく、人々の日常で長く使われる必要のためにある』というカイのデザイン思想、また1950年代の時代背景と日本デザインへの影響に思いを馳せた。「タイムレスデザイン」の価値、「暮らしを変えるデザイン」を考える機会となり感慨深いものになった。
フィンランドの巨匠「カイ・フランクの魅力を語る」デザインセミナーは、総勢670名の参加がありご聴講を頂いた、誠にありがとうございました。

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主催者企画イベント2

「DESIGNERS TALK IN OKINAWAKA」
5/29(水)17:30 - 19:30 会場:沖縄県立図書館3階ホール
1部 基調講演 日本の技術とデザイン 喜多俊之
2部 デザイナーズトーク 2019ミラノサローネリポート、ホテル家具と客室デザイン
             喜多俊之 成ヶ澤伸幸

WIW沖縄イベントは、デザイン、建築関係者、商工会議所、産業支援、紅型、焼き物など伝統工芸に関わる方、沖縄産業能力開発大学、沖縄芸術大学の先生方、学生30名、総勢125名の参加があった。WIW実行委員長でもあるプロダクトデザイナー喜多俊之氏の伝統工芸と技術の講演に静聴を頂き、建築デザイナー成ヶ澤氏による2019ミラノサローネレポートも好評を博した。
沖縄初開催にあたり、那覇で活躍している中島明美氏(JID会員)に感謝を述べたい。地元新聞、ラジオ、SNSで、関係先の建築企業、デザイナー、コーディネーターに熱心に参加を呼びかける広報活動をしていただいた成果で会場が満席となった。また受付など当日運営は学生ボランティアも参集。人と暮らしをデザインでつなぐWIWイベント趣旨への温かいご理解とご支援を皆様より感じることができた。来年も開催して下さいと嬉しいリクエストも頂け、今後もデザインイベントを通じて、沖縄のインテリア産業や伝統産業の発展ためにさらなる交流を深めていきたい。

特別協力:沖縄県立図書館、大晋建設株式会社
沖縄協賛:株式会社カンデイハウス、株式会社平田タイル、フォルボ・フロアリングB.V 日本支店、
     株式会社丸忠

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連携企画

ワールドインテリアウィーク2019 セミナー&トークセッション
『時代が求めるデザイン』

5月27日(月)セミナー 15:30 - 18:20 /交流会&トークセッション 18:20 -19:20
会場:東京ミッドタウン・インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
企画:公益社団法人インテリア産業協会
1部 「木とデザイン」安多茂一(安多化粧合板株式会社 代表取締役/(公益社団法人日本インテリアデザイナー協会会員)
 木材・突き板のスペシャリストによるレクチャー。ミラノサローネ2019デザイントレンドレポートは、多くの画像と解説があり時代のニーズを感じ取れるセミナーとなった。

2部 コンテスト受賞の設計者が語る『時代が求めるデザイン』とは?
ゲストデザイナー:尾越竜子(RON DESIGN 代表)
        平成30年度住まいのインテリアコーディネーションコンテスト経済産業大臣賞
        『田浦の週末住宅』 / プレゼンテーション&レクチャー
ゲストデザイナー:大塚謙太郎(ちびっこ計画・大塚謙太郎一級建築事務所 代表)
        平成30年度キッチン空間アイデアコンテスト協会会長賞
        『保育所にも「暮らし」があるから』 / プレゼンテーション&レクチャー

尾越氏、大塚氏より受賞作品のコンセプト、設計プロセス、施工にまつわる事、裏話などプレゼンテーションがあった。これからの時代の変化に応じたデザインの取り組み方など、実践に役立つ素晴らしい内容のレクチャーだった。交流会&トークセッションは、島村一志氏(公益社団法人インテリア産業協会)が進行役となり、3名の登壇者にインタビューを行い参加者と会話も弾み和やかな会となった。


尾越竜子氏『田浦の週末住宅』


大塚謙太郎氏『保育所にも「暮らし」があるから』


安多氏による講演

 


■WIW実行委員長 喜多俊之(元JID理事長)
     実行委員 川上元美(JDP会長)
     運営委員
     JDP 加藤公敬(常務理事)、矢島進二(事業部 部長)、津村真紀子(事業部 課長)
     JID 丹羽浩之(理事長) 池田和修(元理事長)、井出昭子(副理事長)、
         秋山修治(監事)、成ヶ澤信幸(WIW企業担当)、牧尾晴喜(国際担当理事)
■アートディレクション 廣村デザイン事務所 廣村正彰
■JIDサポーター  
         安藤眞代、飯田一博、小野上勝志、木辺智子、小林秀徳、小宮容一、酒井浩司、 関光卓、
         冨田恵子、中島明美、中島健視、安竹麻智、安多茂一、八十常充、峰尾武、藤谷由紀
■通訳協力 株式会社フレーズクレーズ : 牧尾晴喜、森川弥生、廣井千枝子、竹下ひろ子